映画を観る前に知っておきたいこと

私の少女 女性ならではの視点で描かれた作品

投稿日:2015年4月4日 更新日:

私の少女

孤独なエリート女性警官と残酷な世界に一人取り残された少女。二人は出会い、そしてお互いのために強くなってゆく。二人に背負わされた過酷な運命を切り開いてゆく希望の物語。チョン・ジュリ監督のオリジナル脚本による長編デビュー作。主演は2年ぶりに韓国映画への復帰を果たすペ・ドゥナと、その確かな演技力が高く評価されているキム・セロン。繊細で複雑な心理を写し出す二人の演技と、チョン・ジュリ監督の女性ならではのきめ細やかな描写が、社会の闇を静謐ながら緊張感あふれる演出で浮き彫りにし、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選ばれた。

  • 製作:2014年,韓国
  • 日本公開:2015年5月1日
  • 原題:『도희야』
  • 英題:『A GIRL AT MY DOOR』
  • 上映時間:119分

予告

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あらすじ

とある海辺の村に左遷されてきたソウルのエリート警官ヨンナムは、そこで少女ドヒと出会う。ドヒは母親が蒸発し、義理の父ヨンハと祖母から日常的に暴力を受けていた。村全体が暴力を容認しているなか、ひとり立ち向かっていくヨンナムは、ドヒを守ってくれる唯一の大人だった。そして孤独を抱えるヨンナムもまたドヒの存在に癒されていた。しかしドヒの中で唯一の味方であるヨンナムの存在が次第に大きくなり、やがて激しく執着するようになっていく。少し戸惑いを始めるヨンナム。
私の少女ある日、偶然にもヨンハはヨンナムの秘密を知り、彼女を破滅へと追い込んでゆく。そしてドヒはヨンナムを守るため、すべてを懸け危険な選択をする。少女を守るために心を開くヨンナム、初めて誰かのために行動をおこすドヒ、ふたりはお互いのために強くなり、過酷な運命を切り開こうとする。

映画を見る前に知っておきたいこと

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門

カンヌ国際映画祭ではパルム・ドール(グランプリ)を争うためのコンペティション部門とは別に平行して「ある視点」部門というのがある。『私の少女』が招待されたのはこの部門で、独自で特異な作品や若い才能を評価するためにある。ではこの作品のどこがそう評価されたのか。

この映画はチョン・ジュリ監督のオリジナル脚本でフィクションなのだが、そこには韓国の多くの社会問題が含まれている。虐待、同性愛、男尊女卑、移住労働者など様々な問題が物語の中にちりばめられている。ただ脚本のおもしろさだけではなく、こうした要素が同じような問題を抱える国で共感を呼び、評価に繋がっている。

女性ならではの視点

ペ・ドゥナは少女を引き受ける孤独を背負った警官を静かに力強く演じ、キム・セロンは子供ながらに虐待に堪える小さな怪物という難しい役を演じ切った。そしてチョン・ジュリ監督の女性ならではのきめ細やかな描写が社会の闇を静謐ながら緊張感あふれるタッチで描いている。3人の女性による、女性らしい繊細さ、力強さ、これらの表現は女性ならではの視点から生まれたものだと思う。文字通りカンヌ国際映画祭「ある視点」部門にふさわしい作品ではないだろうか。

監督・キャスト

監督・チョン・ジュリ

チョン・ジュリ映画好きだった父親の影響から映画監督を目指す。本作が長編デビュー作であるにもかかわらず、ストックホルム国際映画祭で最優秀新人監督賞を受賞し、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に招待された。しかし本人の人柄からは天才とかそういった印象はない。「初めての長編製作で何度も壁にぶつかり、まわりのスタッフに助けられ、一緒に仕事してより良いものがつくられ、それが喜びになる。」そんな風に語る彼女は、新人らしく映画製作が純粋に好きという印象を受けた。

次回作の構想として釜山映画祭のプロジェクト・マーケットで今書いているシナリオを公開した。40代半ばと19歳の二人の女性を描いた物語だ。19歳の女性が主人公で、身近で彼女に関わる人々、それによって影響を受ける彼女の姿を描いた物語だ。 また本人はいつかSF映画も制作したいと言っている。

ペ・ドゥナ:(ヨンナム)

ペ・ドゥナ演劇俳優である母キム・ファヨンの影響を受け、幼い頃から俳優へ憧れていた。1999年『リング』の韓国リメイク映画『リング・ウィルス』で貞子役を演じ、映画デビューした。シリアスな作品からコメディーまでこなす実力派として、ウォシャウスキー姉弟の『クラウド アトラス』でハリウッドデビューを果たした。現在公開中の『ジュピター』にも出演している。

キム・セロン:(ドヒ)

キム・セロンTVドラマ『ゲームの女王』や『ポポポ』に子役として出演していた。その後、韓国系フランス人ウニー・ルコント監督の自伝的映画『冬の小鳥』で映画デビューし、2010年に『アジョシ』が韓国国内で大ヒット。天才子役として注目を浴び、第8回大韓民国映画大賞新人女優賞を史上最年少で受賞した。そんな彼女も、本作では複雑な役柄のため一度は辞退したが、チョン・ジュリ監督から再度ラブコールを受け出演を決意した。

-ヒューマンドラマ, 洋画

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