「老い」と「性」の狭間で葛藤する男の姿を描いたR18+のヒューマンドラマ。日本映画初のヘアヌード解禁作となった「愛の新世界」の高橋伴明監督が21年ぶりにエロスをテーマに挑んだ話題作だ。
主人公の映画監督、時田修次を奥田瑛二。虚構の世界と時田を結びつける女子高生・律子はオーディションで選出された新人女優・村上由規乃が演じる。
- 製作:2015年,日本
- 日本公開:2015年9月12日
- 上映時間:108分
- 映倫区分:R18+
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 高橋伴明
- 4 こういう映画こそ
予告
あらすじ
赤玉伝説、知ってるか
男が打ち止めになったとき、先っぽから赤い玉が出るんだとさ
大学で映画撮影の教鞭をとりながら、自らは新作映画の撮影に入れないでいる映画監督・時田修次。映画とは、自らの経験が投影される、そう考えている時田は、まるで自分が映画の登場人物でもあるかのごとく人生を流浪しているようにもみえる。
新作の脚本にとりかかると時田の私生活には唯という存在が根を下ろしているが、その現実から虚構(映画)の世界に誘うように時田の前に現れる一人の女子高生・律子。
世界の境界さえも喪失していくように、いつしか律子の存在が時田自身の人生を狂わせていく・・・。
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映画を見る前に知っておきたいこと
高橋伴明
学生時代には学生運動にも積極的に参加していて、それが原因で早稲田大学を中退になっている。
その頃からピンク映画の現場でアルバイトをしていた経験が生きたのか、1972年にピンク映画『婦女暴行脱走犯』でデビューして依頼その方面の界隈で名を馳せ、後に一般映画でもその実力を認められるようになる。
学校や大学で教えられ育てられた映像作家とは少し違う、現場での叩き上げで時代を築いた監督である。そんな彼が京都大学の教鞭をとるようになったのは2012年。大学のメッセージには高橋伴明という人間の映画に対する姿勢がそのまま現れている。
映画の神様っているのよ。
本当に不思議なことが撮影で起こったりする。
ここで風がぶわっと吹いてほしいってときに風が吹いたりね。突然、雲が割れて太陽が現れたり…。映画づくりをやっていて良かったと思うことは、必然的にいろんな物事を覚えること。
今まで興味なかったこととも向き合わなきゃいけない。
想像力、創造力、コミュニケーション能力、あと共同作業だから忍耐力だったりね。映画に携わると、何でもかんでも力にしなきゃいけない。その力は映画業界のみならず、他のどんな仕事に就いたとしても、万能の力だよね。例えば、魚屋さんでもね。
wikipedeiaによると、「赤い玉、」は京都造形芸術大学の教授を務めることになって以来、初の監督作品となるようだ。知ると、映画監督・時田修次と高橋伴明の不思議な共通点に目がいくだろう。
高橋伴明自身が、主人公にどれほど自分を重ねていたのかは分かるはずもないが、「映画に携わると、何でもかんでも力にしなきゃいけない。」という彼のメッセージが頭をかすめる。
現実と虚構、映画監督であれば幾度も立ち返った問いだろう。どうしようもなく迫りくる「老い」に突如現れた現実味のない「性」。赤い玉が打ち止めを知らせるのはリアルか、それともフィクションか。
こういう映画こそ
マニアックすぎて世に出ないのか、それともあまり興味を持たれないのか、あるいは両方か。最近の日本映画界では、原作を持たない100%映画のヒューマンドラマは珍しい気がする。映画業界全体が原作をどう表現するかに必死になっている昨今、この様な作品にどんな評価が下されるのかは楽しみなところである。
もちろん、オリジナルだから良い、原作があるから悪いというような極端な話をするつもりはないが、“日本映画らしい映画”をサイトで取り上げたのはずいぶん久しぶりな気がする。たまたま機会に恵まれなかっただけかもしれないが。
R18+というところは抜きにしても、雰囲気にある種の生々しさというか、グロテスクなリアリティを持っている作品だけに、誰でも楽しめるというわけにはいかないと思うが、酷評でも絶賛でもこういう映画こそもっと盛り上がって欲しいと思う。