一般的な平均摂取量ティースプーン40杯。60日間、その量の砂糖を毎日摂り続けたら、人間の心と体はどうなってしまうのか。自らの体を使って実験を試みたオーストラリアのドキュメンタリー。
ルール1、清涼飲料水や菓子類などに含まれる砂糖ではなく、シリアルやヨーグルトなど、「健康食品」と銘打たれたものに限る。
ルール2、60日間毎日ティースプーン40杯分の砂糖を摂取すること。
監督であり、被験者でもあるオーストラリアの俳優デイモン・ガモーは、子供が生まれたのを機に食生活について考え始めた。しかし、砂糖については、たくさんの人が色々な事を言っていて分からないことだらけ。
そこで、自分の体を使って実験することを思いついた。
「信じられるのは自分の体だけ!」
60日間の体を張った実験は、砂糖がもたらす心身への影響と、身近な食品に含まれる砂糖の危険性が明らかにしていく。
- 製作:2015年,オーストラリア
- 日本公開:2016年3月19日
- 上映時間:102分
- 原題:『That Sugar Film』
Contents
- 1 予告
- 2
映画を見る前に知っておきたいこと
- 2.1 砂糖は有害か否か
- 2.2 子供なら簡単な過糖生活
- 2.3 砂糖を絶った人たち
予告
映画を見る前に知っておきたいこと
砂糖は有害か否か
「砂糖は有害物質かどうか」というテーマは、ネット上でもしばしば語られる。「砂糖なんか食べないし関係ないよ」と言う人はほとんどいないだろう。
良く話題にあがっているのは、白砂糖は有害で、三温糖は無害、黒砂糖は体に良いという話だが、さてこれは正しいのか。
実際に検索して頂くと良く分かって頂けると思うが、予告動画で言われている通り、本当に様々な情報が交錯していて、何が正しいのかを考えるには自分で砂糖の研究をする他ないという状況だ。
しかしながら、当の研究者はというと、食品企業との金銭による癒着が問題になっているという話もあり、これでは権威もへったくれもない。
「なんてこった!真実が覆い隠されている!」とショックを受ける方もおられるかもしれない。ともあれ、砂糖の有・無害の話にまつわる経済的影響を考えると“ありうる”というよりも、“当り前”のことだとも言える。
なぜならば、「砂糖は有害でした」ということになってしまうと、経済的に損をする人間は大勢いても、得をする人間はほとんどいない。大きな経済性の前では、真実など無価値に等しい。
世界保健機関(WHO)の解答
WHOは、「砂糖は安全だ」と宣言を出し、太鼓判を押しているものの、その一方で、砂糖は少ない方が良いというガイドラインも発表している。
成人も子どもも、果物、野菜、牛乳由来の糖分を除いて、1日の糖分摂取を総摂取エネルギー量の10%未満に減らすように勧告しています。さらに5%未満にしたり、1日あたり約25グラム(ティースプーン6杯)に抑えると、さらに健康によいと付け加えています。
引用:一般社会法人サイエンス・メディア・センター
ちなみに、ティースプーン6杯という量は、コカコーラ350mlの1缶でアウト。ヤクルトでも2本も飲めば怪しい量だ。アイスやお菓子などもっての他。種類に限らず、一人分を平らげるとWHOの提唱する10%は優に超える。
スポーツや風邪をひいた時、真夏の熱中症対策で活躍するポカリスエットなどのスポーツ飲料も、薄めて飲まないと急性糖尿病になりかねないと言われるほど、市販のジュースや加工食品は砂糖まみれである。
砂糖そのものの有害無害どころか、量の点で問題外。そんな商品が溢れかえっているのが現代の加工食品市場だということは頭に入れておきたい。
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子供なら簡単な過糖生活
被験者となったデイモン・ガモーが毎日の摂取した砂糖の量は、ティースプーン40杯。WHOが提唱する量の約8倍である。
さすがにこの量は、もはや砂糖がどうとかいう話ではないような気もする・・・。日常的にお菓子やジュースを食べている人でなければ難しいかもしれない。
しかし、ふと立ち止まって考えると、子供ならば普段の生活でこの量を摂取することは容易いのだ。
デパートなどでは、よく子供がソフトクリームをほおばっている姿を見かけるが、大人との体重差を考えるととてつもない大きさである。
急激な糖質の摂取による血糖値の上昇は、脳を「シュガーハイ」と呼ばれる状態に陥れ、さらに甘いものを欲するようになる。結果、甘いものが食べられないことによるイライラが募り、癇癪を起こしたり、ぐずったりするようになる。
加えて舌が慣れてくるので、大人になっても甘いものを恒常的に摂取しなければ、精神的に落ち着かなくなってしまう。そうなると、ティースプーン40杯、総摂取エネルギー量の10%の8倍の量を摂取することは、それほど大変ではない。
お子さんがいらっしゃるご家庭では、特に砂糖との付き合い方は真剣に考えたい。
砂糖を絶った人たち
そんな状況化で、摂取どころか「有害か無害か分からないならもう食べない」と砂糖を断つ誓いを立て、断糖生活を送る人も見られるようになってきた。糖分の摂取は炭水化物やフルーツに任せて、砂糖は一切口にしないという生活スタイルだ。
断糖にはさまざまなメリットがあると言われている。ざっくり簡単にあげると、以下の通り。
- 痩せる
- 吹き出物が減る
- 腸内環境が整う
- 肌が綺麗になる
- 気分が落ち込んだりイライラしにくくなる
- 病気の予防になる
メリットだけ見ると良いことずくめで、いざ断糖生活!!と勇み足を踏む方もおられるかも知れない。しかし、食生活を変えるのを半端な知識で断行してしまうといらぬデメリットを生みかねない。
なので、もし断糖を考えている人がいらっしゃれば、まずは本を買って読んでみるのをオススメする。断糖にも様々なスタイルが提唱されているが、中でもわかりやすいと評判の本がこちら。
おいしい食事は幸せの形のひとつだ。しかし、健康というテーマからみると死ぬまで付き合っていかなければならない問題でもある。時代とともに変化を繰り返し、正解のない手探りの状況がこれからも続いていくだろう。
ティースプーン40杯、オーストラリアの平均摂取量を摂取し続ければ、人の体はどうなっていくのか。食生活を真剣に考える人にとって、このドキュメンタリーは貴重な体験になることと思う。