映画を観る前に知っておきたいこと

【バードピープル】人生に疲れた心に響く映画

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パリのシャルル・ド・ゴール空港で起きたちょっと不思議な出来事。仕事も家族もすべてを捨てた男と、退屈な日常にうんざりしてスズメになった女を描いたドラマ。設定が少し突飛なだけあって、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された作品。

『レディ・チャタレー』のパスカル・フェラン監督による8年ぶりの新作。主演は『彼は秘密の女ともだち』で主演を務めたフランスのアナイス・ドゥムースティエと、『いまを生きる』のジョシュ・チャールズ。

鳥になって世界を見る、思いもよらない明日が来る。人生に疲れた心に響く作品・・・


  • 製作:2014年,フランス
  • 日本公開:2015年9月26日
  • 上映時間:128分
  • 原題:『Bird People』

予告

あらすじ

バードピープル
「今日はパリ、明日はドバイ、分刻みのスケジュール。こんな日々が死ぬまで続く。限界だ。仕事は電話で辞めた。妻とはSkypeで別れた。あの鳥のように自由になりたい。」

ゲイリー

バードピープル
「大学は休学中。今はホテルのルームメイド。私ってまるで幽霊みたい。停電の夜、何かが起こる予感 。どうしよう、これが私? 覚悟を決める。もう飛ぶしかない。どうせなら、うんと楽しんで。」

オドレー

パリ、シャルル・ド・ゴール空港内のホテル。ここでは鳥が止まり木を渡るように、人びとが毎日忙しく行き交っている。このホテルですれちがう、世界をひとり飛び回るビジネスマンのゲイリーと、かわりばえのしない毎日をおくるホテルメイドのオドレー。

世界を駆け回るITエンジニアのゲイリーは、今日はパリでのミーティング、明日はドバイに経たなければいけない。見知らぬ地で、1人で迎えるであろうクリスマス。いつからか本当の会話が出来なくなってしまった妻。そして、終わりのない競争。このままでは窒息する。会社を辞め、妻と別れ、すべてを捨てて生活を変えようと・・・

ヒルトンでルームメイドのアルバイトをする女学生オドレーは、アパルトマンと大学とホテルを往復する毎日にうんざりしていた。一ヶ月の内40時間を電車の中で過ごす生活。留守の間にだけそっと現れ、他人の部屋を掃除して回る彼女はまるで幽霊。人々にその姿は見えず、誰の人生に関わることもない。部屋を掃除しながら、泊ったお客を想像し、窓から空港を眺めるのが日課だった。ある日ホテルが停電になり、屋上に上がったオードレイは、欄干のスズメと目が会う。そして不思議な体験をすることに・・・

境遇は違うが、どこかで日々に行きづまった2人。自由になりたいと願う気持ちは同じだった。そんな2人に、明日を変えるちょっと不思議な出来事がふと訪れる。


映画を見る前に知っておきたいこと

フランス映画らしい芸術的な作品

ちょっと不思議な空気の映画。小説のように淡々と描かれる優しい雰囲気の中に、突如不思議なシーンがやってくる。スズメに変身したオドレーは、夜のパリへ飛び出す。鳥の目線で、産毛まで見えるほどの近くから、或いは遥か上空から。小さく自由な身体を得たオドレーは、同じ街で眠る人々の生活、その息遣いや悲哀、森に生きる野性の生き物たちの当たり前の命のやり取りを、さらにはそれらが折り重なって成る複雑で圧倒的な世界そのものを、その眼に焼き付けてゆく。オドレーの目線で撮られたこれらの絵は美しい。そんなストーリーや映像美が、映画のテーマを観客の感覚に植え付けていく。フランス映画らしい芸術点も高い作品だ。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品される作品は、本作のような少し変わった作風が多いが、映画のテーマ自体は誰もが共感できるようなものだ。日々に疲れているなら、この作品の手法を感覚的に理解することは難しくないと思う。

パスカル・フェラン監督

こんなちょっと風変わりな作品を撮る監督がどんな人物か気になる人のために。パスカル・フェラン監督はフランスの女性監督でこれまでに手掛けた作品もバラエティに富んでいる。といっても作品を創るペースが遅いため、長編で言えば本作がまだ4作目である。

長編デビュー作となったのが、1994年の『死者とのちょっとした取引』という映画だ。親しい者の死に直面した3人の主人公が、その死とどう向き合って生きていくのかというテーマを三部構成で描くという、こちらもデビュー作としては変わった手法で撮られている。作品自体の評価は高く、第47回カンヌ映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞し、フランス映画の新しい世代として注目された。

次に製作されたのが『a.b.c.の可能性』という映画で、こちらは1995年の作品とスパンは早い。ストラスブール国立劇場付属演劇学校の依頼を受け、同校に通う10人の若者たちを主役に、彼らが抱く不安や悩みを繊細に演出し、第53回ヴェネチア映画祭で国際批評家連盟賞に輝いている。

2006年に製作された3作目が、また挑戦的でおもしろい。『レディ・チャタレー』という映画だが、。D・H・ロレンス原作の小説「チャタレー夫人の恋人」がもととなっている。この小説は性的表現が過激なことで知られ、1928年の発刊当時は一部の描写が削除された。大胆な性の問題を露骨に扱った作品で、内外で激しい論議の的となり、日本では伊藤整による翻訳本の出版に関して最高裁までの裁判となったことも。

そして本作に至るわけだが、パスカル・フェラン監督がどんな人物か逆にわからなくなってしまうぐらい作風が異なっている。本当に自分が撮りたいものだけを撮っているのだろうと思わせるし、女性であることがなおさらそれを強く印象づける。彼女もまた希有な存在の監督だと思う。こういう監督の作品はツボにハマれば、かなり好きになるはずだ。

-ヒューマンドラマ, 洋画

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