映画を観る前に知っておきたいこと

【グラスホッパー】映画からも原作の裏解釈が読み解けるか

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グラスホッパー

人気作家・伊坂幸太郎の140万部を突破したベストセラー小説「グラスホッパー」を生田斗真主演で映画化­。監督を務めたのは、『脳男』に続き生田とタッグを組む瀧本­智行。脚本は『あなたへ』で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した青島武。浅野忠信共演。

愛する人を失い復讐に燃える元教師【鈴木】、人の心を­操り自殺に追い込む殺し屋【鯨】、その命を狙うナイフ使いの若き殺し屋【蝉】の3人の視点で進むストーリーは予測不能。一度足を踏み入れたら引き返せない“巻き込まれ型”のサスペンス・エンターテイメント。


    • 製作:2015年,日本
    • 日本公開:2015年11月7日
    • 上映時間:119分
    • 映倫区分:PG12
    • 原作:ベストセラー小説「グラスホッパー」伊坂幸太郎

グラスホッパー 角川文庫

予告

https://youtu.be/ZdSCCQf-x6E

あらすじ

世界でも有数の人口過密都市である東京・渋谷。昼夜関係なく人々が行き交う雑踏の中には、闇の住人たちが紛れ込んで生きている。渋谷スクランブル交差点でハロウィンの夜にある事件が起こる。それをきっかけに、気弱で虫も殺せない心優しい草食男が闇の男たちの標的となってしまう。巻き込まれたのは元中学校教師の【鈴木】。彼は、無差別で凄惨なあの事件によって殺された婚約者【百合子】の復讐のため、あまりに場違いな裏社会の中に身を投じていくことに……グラスホッパー百合子が殺害された現場には“本当の犯人は別にいる”というメッセージが書かれたメモが残されていた。それを拾った鈴木は、メモに書かれた「フロイライン」という会社に潜入する。鈴木はあの事件の背景には、裏社会のドン【寺原会長】とイカれた二代目【寺原Jr.】の存在があることを知る。そんな矢先、また渋谷で事件が起こる。今回のターゲットとなったのは、なんと寺原Jr.だった。鈴木は、寺原会長の腹心でフロイラインの女性幹部【比与子】の命令で、寺原Jr.を襲った殺し屋【押し屋・槿】を追いかけるはめになる。しかし、状況は二転三転、鈴木は組織から追われる身に……グラスホッパーまた一方では、組織と繋がる殺し屋たちが蠢いていた。“自殺屋”と呼ばれる人を絶望させる不思議な力を持った自殺専門の殺し屋【鯨】。彼を始末することを依頼された裏社会の交渉人【岩西】と、その相棒にして驚異的な身体能力でナイフを操る若き殺し屋【蝉】。彼らは圧倒的な力を持ちながら闇の中でもがき続けている。その生き様は非情ながらも悲哀に満ち、裏社会での生き方を模索しているようでもあった。そして、出会うはずのなかった鈴木と殺し屋たちが交差することで意外な真実が明らかになる。果たして、鈴木は復讐を果たし、裏世界から抜け出すことができるのか?


映画を見る前に知っておきたいこと

予測不能、分類不能な小説「グラスホッパー」は伊坂幸太郎の代表作にして問題作

本作の原作となった小説「グラスホッパー」(2004)を執筆した伊坂幸太郎は、これまで多くの話題作を手掛けてきた。その証拠に『アヒルと鴨のコインロッカー』『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』など、すでに10作品が映画化されている。そんな伊坂幸太郎の作品の中で最大の問題作とされる「グラスホッパー」は140万部の売り上げとともに彼の代表作となっている。直木賞の最終候補にも残った。

映画でも復讐に燃える【鈴木】、殺し屋【鯨】、その命を狙う若き殺し屋【蝉】の3人の視点から描かれているが、小説の時点で3人が語り手として交代していく手法で書かれていた。そこから紡がれる物語は予測不能であり、さらにサスペンス、コメディ、オフビートなど分類不能の要素を含む今までにない作品として伊坂幸太郎の代表作にして問題作と言われる。

「今まで書いた小説のなかで一番達成感があった」

伊坂幸太郎

なぜ原作「グラスホッパー」が問題作なのか?

伊坂幸太郎の代表作にして問題作と言ったが、実際この「グラスホッパー」という小説がそこまで問題作か言われるとピンとこないかもしれない。それは小説の裏解釈によるものではないかと思う。この一連の事件によるスリリングな物語はすべて主人公・鈴木の幻覚だったとも言われている。もちろん確信のある説ではないが、そう解釈できる伏線が用意されているのだ。話の中で登場する元カウンセラーのホームレス・田中が幻覚を見る兆候について語るシーンがある。そこにはこんな例が挙げられている。

  • 通過する列車がいつまで経っても通り過ぎない
  • 歩いても歩いても階段が終わらない
  • 街で立っている時に目の前の信号の点滅が止まらなくなる

    そして鈴木に、これらの兆候が見受けられるシーンが描かれている。物語の前半で鈴木は信号の点滅が止まらなくなり、ラストシーンでは「それにしてもこの列車、長くないか」というセリフがある。これは、明らかに裏解釈を狙った描写に感じるのだがどうだろうか。まとめると、「一連の事件は交通事故で妻を失った鈴木の幻覚」という解釈だが、ここからも問題作という評価が生まれている気がする。実際、140万部を売り上げたのはそのストーリーだと思うが、それをすべて否定する解釈を本当に用意していたのなら問題作だ。

    映画でもこの解釈が描かれるのか、そこに注目して見るのもおもしろいと思う。映画ではそうしたシーンはカットされることも多く、ましてやスリリングな展開を持ち味とする本作ならなおさらだ。それでもこうした伏線が用意されているなら、裏解釈は原作者の狙い通りということになる。

  • -ミステリー・サスペンス, やくざ, 邦画

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