映画を観る前に知っておきたいこと

【天皇と軍隊】パリ発、戦後日本の“天皇制”と“戦争放棄”の真実

投稿日:2015年7月14日 更新日:

2009年パリで上映されたのは、戦後日本の“天皇制”と“戦争放棄”をテーマにしたドキュメンタリーだった。曖昧で矛盾に満ちた日本のシステムを、数々のインタビューや世界中から集めた貴重なアーカイブ映像を交えてひも解いていく本作は、日本人にとっても新鮮に映る。

フランス映画でありながら、監督はパリ在住の日本人・渡辺謙一。フランスや欧州のテレビ向けに『ヒロシマの黒い太陽』『フクシマ後の世界』といったドキュメンタリーを撮り続けている。


  • 製作:2009年,フランス
  • 日本公開:2015年8月8日
  • 上映時間:90分
  • 原題:『Le Japon, l’empereur et l’armee』

あらすじ

日本には、戦争および軍隊の保持を禁じる日本国憲法第9条が存在すると同時に、自衛隊も存在する。日本国憲法第1条で“天皇は日本国の象徴”とされている反面、国民主権である。こうした曖昧で矛盾に満ちた日本のシステムを、国外からの視点で描いている。天皇と軍隊天皇制や戦争放棄、靖国問題、東京裁判、自衛隊、日米安保など、日本の戦後史で議論され続ける問題を取り上げ、世界中から集めた貴重なアーカイブ映像や国内外の論客による秘蔵インタビューでひも解いていく。今は亡き政治家の田英夫氏や、日本国憲法人権条項の草案作成のメンバーだったベアテ・シロタ・ゴードン氏らが登場し、政治家の田英夫氏、一水会顧問の鈴木邦男氏、法学者の樋口陽一氏といった人物のインタビューが見られる。天皇制や戦争放棄はマッカーサーと昭和天皇を主軸に描かれている他、三島由紀夫事件などいくつかの戦後トピックスも取り上げている。

映画を見る前に知っておきたいこと

天皇とは

日本は世界で最も歴史ある国で、2000年以上続く国家は他にない。大体国家の基盤の一つとして宗教というものが存在するが、日本の場合、天皇が日本の宗教「神道」の神のお告げを聞く神主の最高責任者であり、政治の象徴(権力者ではなく権威者)として存在する。日本人はずっと天皇を中心として国を発展させてきた。

天皇家のように125代も続く皇族は世界にもなく、その地位はローマ法王と並び世界でも最も権威がある。実際、アメリカ大統領が最敬礼するのは天皇陛下とローマ法王と英国君主だけである。今の日本人が思うより遥かに影響力が強く、外交においてもその役割は大きい。

日本国憲法第1条で“天皇は日本国の象徴”となっているが、今の若い人たちには、政治に干渉するわけでもない本当にただの象徴というイメージになっているように思う。実際は直接政治を行うわけではないが、とても影響力があり、その存在意義は計り知れない。右翼的な思想は必要ないが、改めて認識してほしい。天皇と軍隊これは昭和天皇とマッカーサーの会談のときに撮られた写真だが、昭和天皇は肩に力が入っているのに対し、マッカーサーはリラックスした様子だ。この会談は昭和天皇の方からマッカーサーに会いに行っており、敗戦国の現状を表した日本人にとって屈辱的な写真だ。僕たちは歴史を知る必要がある。

今、見てほしい映画

8月8日公開の『日本のいちばん長い日』でも、日本では連日“集団的自衛権”の容認が議論されているので“今、見てほしい映画”と紹介したが、本作も同じような理由で“今、見てほしい映画”だ。賛成と反対の意見に大きく別れている現状の今、“集団的自衛権”の容認の是非をそれぞれに考えてもらいたいからだ。

日本のいちばん長い日』は戦争の残酷さや悲惨さを改めて感じられるような作品だったが、本作は戦争そのものというよりは戦後の日本の体質について描かれたものだ。そこには“戦争放棄”というものがテーマになっている。これは今の日本の基盤となっている部分であり、時代とともに少しずつ変貌を遂げている部分でもある。“集団的自衛権”の容認はその変貌の代表的なもので、これについて考える時、どうして日本は“戦争放棄”することになったのかを知るのは重要な意味を持つ。歴史を知ることで、相対的に“今”が見えてくるからだ。

例えば、“戦争放棄”は日本人が自ら望んだわけではなく、アメリカによって強制的に牙を抜かれてしまったといえる。今でこそ平和を愛する国民性であるが、いわゆる“平和ボケ”してはいまいか?本作の戦後トピックスで三島由紀夫事件について触れているが、これは三島由紀夫が自衛隊の決起を促すために陸将の益田兼利総監を監禁状態にして立てこもり、最後は自決するというものだ。牙を抜かれた日本を嘆き、憲法改正を訴えた。結局、今日まで日本が軍隊を持つことはなかったが、憲法の解釈を拡大しPKO活動で海外へ自衛隊が進出するまでになっている。奇しくも三島由紀夫が望んだ方向に近づいている。

-ドキュメンタリー, 戦争

執筆者:


  1. 武田 進「 より:

    福島瑞穂のインタービューを加えたのは驚いた。
    さぞかし中韓が喜んだことでしょう。

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