映画を観る前に知っておきたいこと

【セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター】偉大な写真家の半生

投稿日:2015年7月8日 更新日:

セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター

ブラジル出身の報道写真家セバスチャン・サルガドの足跡を追ったドキュメンタリー。モノクロを基調とした彼の写真は人間を被写体の中心にに置き、死、破壊、腐敗といった根源的なテーマを扱うことから“神の眼を持つ写真家”と呼ばれた。

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』など芸術分野のドキュメンタリーを撮り続けるドイツの巨匠ビム・ベンダースと、セバスチャン・サルガドの息子であるジュリアーノ・リベイロ・サルガドが共同監督を務める。

偉大な報道写真家が辿り着いた地球最後の楽園「Genesis(ジェネシス)」とは?この映画は壮大な地球へのオマージュである。


  • 製作:2014年,フランス・ブラジル・イタリア合作
  • 日本公開:2015年8月1日
  • 上映時間:110分
  • 原題:『Le sel de la terre』

予告

あらすじ

ヴィム・ベンダース監督は、ある1枚の写真と出会ったことがきっかけでセバスチャン・サルガドの足跡を辿っていく。セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター30代で写真の世界に足を踏み入れたセバスチャン・サルガドは40年かけて世界中を回り、妻と企画し、何年も費やしたプロジェクト作品は世界的な賞を数多く受賞した。モノクロを基調とし、人間を被写体の中心にに置き、死、破壊、腐敗といった根源的なテーマを扱うことから“神の眼を持つ写真家”と呼ばれたが、戦争、難民、虐殺、人間の弱さと闇、セバスチャン・サルガドはそこに救いなどないと考えるようになる。セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター

「破壊されたものを撮るのではなく、いま在るがままのものを撮る。我々が必ず守らなければならないものを見せるために」

彼は2004年に地球上の最も美しい場所を探すプロジェクト「Genesis(ジェネシス)」を始める。ガラパゴス諸島やサハラ砂漠など120か国にも及ぶ場所で撮影を敢行し、遊牧民のシベリア横断や、熱気球から撮影した水牛の群れなどを写真に収めていく。彼の作品は戦地から地上の楽園を探す旅へと変化していった。セバスチャン・サルガド 地球へのラブレターセバスチャン・サルガド 地球へのラブレターセバスチャン・サルガド 地球へのラブレターそして、そんな父親の正体を知るため、息子のジュリアーノ・リベイロ・サルガドもビム・ベンダース監督と共に「Genesis(ジェネシス)」に同行する。2人の視点から、写真家であり冒険家であるセバスチャン・サルガドの足跡を解き明かしていく。


映画を見る前に知っておきたいこと

写真と映画の違い

この映画を観る前に、写真と映画の違いを明確にしておいてほしい。というのも、それがこの作品が生まれた理由に直結してくるからだ。写真と映画はどちらも芸術であるが、瞬間の芸術と、ある一定の時間の中で表現する芸術という違いがある。

写真は見た人がその瞬間に感性に訴えて魂を揺さぶられる。衝撃というか瞬発力は映画以上かもしれない。その反面、情報量が少ないため多くを表現できるわけではない。

映画はある一定の時間の中で表現するので、多くの情報を詰め込める。ましてや、音楽を挿入することもできるし、様々な表現が可能だ。

写真と映画の違いをふまえたうえで、なぜ本作が生まれたのか考えてみたい。セバスチャン・サルガドは自分の写真で多くの人に「破壊されたものを撮るのではなく、いま在るがままのものを撮る。我々が必ず守らなければならないものを見せるために」という想いを伝えたかったはずだ。そして彼は、過去に地球で起きたことの重要な目撃者として、さまざまな記録を人に継承することはできた。しかし、彼の見た真のストーリーまでを知ることはできない。

実際にセバスチャン・サルガドが写真を撮る時、それはゆっくりと時間をかけて行われる。現地に何度も訪れ、人々と対話し、共に住んだり、同じ食事を口にしたり、友人になることもある。そこにあるストーリーまで伝えようと撮られたのが本作だ。ビム・ベンダース監督もセバスチャン・サルガドと同じ行動をしながら映画を制作していった。そして共同監督である息子のジュリアーノ・リベイロ・サルガドも、家族以外にも父の写真のストーリーまで共有してもらいたいという強い想いがあった。

セバスチャン・サルガドの写真は芸術であると同時にメッセージ性もとても強い。この映画は、地球上の最も美しい場所を探すプロジェクト「Genesis(ジェネシス)」を僕たちが理解するのに重要な役割を果たしてくれるはずだ。

ヴィム・ベンダース監督

ヴィム・ヴェンダース
ヴィム・ベンダース監督がこれまでに撮った他のドキュメンタリーも評価が高く、そして扱うテーマはどれも芸術の要素が強い。本人も画家を目指していた時期もあり芸術に強い関心があるようだ。

1999年の『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』ではライ・クーダーとキューバの老ミュージシャン達との演奏を中心に、彼らの来歴、キューバの日常を描いたキューバ音楽ドキュメンタリーだ。2011年の『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』は2009年に亡くなったドイツの振付家のピナ・バウシュを扱ったダンスドキュメンタリーだ。そして本作は写真家のドキュメンタリーとなっている。

だが、ヴィム・ベンダース監督最も評価されているのはロードムービーだ。1976年の『さすらい』は即興演出によりロードムービーの頂点を極めた作品とされ、1984年の『パリ、テキサス』はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞している。もしヴィム・ベンダース監督のファンになった人がいたらこの辺りの作品には触れてほしい。

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