映画を観る前に知っておきたいこと

娘よ
日本で初めて公開されるパキスタン映画

娘よ

遥かなるカラコルム山脈を縫って
母と幼い娘は走り出した!

僕たちは映画として初めてパキスタンという国が語る社会問題に触れることになる。構想10年、実話に基づく、かの国の山岳地帯で繰り広げられる母と娘の緊迫の逃走劇。

パキスタン出身の女性監督アフィア・ナサニエルが脚本、製作までを務め、長編処女作にして、2015年アカデミー外国語映画賞の同国代表作品に選出、そしてクレテイユ国際女性映画祭観客賞、ソノマ国際映画祭最優秀作品賞など多くの国際映画祭で評価された注目作だ。


予告

あらすじ

パキスタンとインド、中国の国境に聳え立つ雄大なカラコルム山脈。その麓には多くの部族がひしめき合っていた。その中の一つの部族に属する若く美しい母アララッキ(サミア・ムムターズ)にとって、10歳の娘ゼブナ(サレア・アーレフ)と過ごす時間は掛け替えのないものだった。

娘よ

© 2014-2016 Dukhtar Productions LLC.

ある日、部族間の衝突を回避するため、ゼナブと相手部族の老長老との結婚が決められてしまう。それは、かつて15歳の時に母アララッキも経験した、背く者には死が待つのみの決して抗うことのできない鉄の掟。

娘よ

© 2014-2016 Dukhtar Productions LLC.

結婚式当日、娘の運命を変えるため、アララッキはゼブナを連れて部族を離脱した。対面と誇りを傷つけられた両部族は二人の追跡を開始する ──


映画を観る前に知っておきたいこと

これまでパキスタンを舞台とした作品はいくつもあったものの、パキスタン映画が日本で公開されるのは初めてのことである。しかも、それが女性監督アフィア・ナサニエルの初長編だというのだから驚きだ。

カラコルム山脈の目もくらむような切り立った岸壁を始めとする、パキスタンの息を呑む絶景を背景に繰り広げられる母娘の逃避行は、観る者に並々ならぬ緊迫感を伝え、実話として描かれる物語から見えてくる知られざる文化体系によって、僕たちはそこにある恐ろしい現実を知る。

名誉殺人

パキスタンでは多くの部族が混在し、絶えず衝突と融和を繰り返しているため、本作で描かれているような当人の意にそぐわない結婚も文化の一部となってしまっている。

その歪みに生じるのが名誉殺人である。親が認めない相手と娘が結婚した場合、「親族の名誉を傷つけた」として伝統的にまかり通っている殺人だ。大半は父親、兄弟およびその他の家族によってそれは行われ、人権擁護団体によると、パキスタン全体で1日当たり3人前後の女性が名誉殺人の犠牲になっているという。

名誉殺人が容認される背景には、パキスタンの国教であるイスラム教が深く関係している。コーランに記された「命には命を、目には目を、鼻には鼻を、耳には耳を、歯には歯を、全ての傷害に同じ報復を。」という教えがイスラム世界に根ざしているため、法改正だけでこの問題を解決することはできないのだ。

同国の首相ナワーズ・シャリーフ氏も名誉殺人には否定的な立場を取っているが、彼の考えもアッラーのお告げ以上に重要視されるものではないのだろう。

名誉殺人を取り上げたパキスタン映画は多いが、本作は初めて日本に届けられる内側からこの問題を見つめた作品となる。

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