映画を観る前に知っておきたいこと

殺されたミンジュ
キム・ギドクが描き出す民主主義の危機

投稿日:2016年1月11日 更新日:

殺されたミンジュ

少女が葬り去られた日、
良心はすべて
この世から消えた。

カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界三大映画祭で最も評価された韓国人監督キム・キドクが仕掛ける、モラルさえ超越したサスペンスフルな群像劇。

ある夜、女子高生オ・ミンジュがソウル市内の市場で屈強な男たちに追われ、暗い路地で無残に殺された。事件から1年後、ミンジュの死の真相を探る謎の集団“シャドーズ”によって実行犯は一人、また一人と拉致されていく ──

複雑な心情を抱える“シャドーズ”のリーダーに『悪いやつら』(13)のマ・ドンソク。そして『春夏秋冬そして春』(03)以来11年ぶりのキム・ギドク作品出演となった、キム・ヨンミンによる一人8役の圧巻の演技は映画の見どころとなった。

2014年ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ・セクション、オープニング上映作品&作品賞受賞。


予告

あらすじ

とある5月、ソウル市内の市場を必死に逃げ惑う女子高生ミンジュ。彼女は屈強な男たちによって路地の片隅に追い込まれ、叫ぶ間もなく無残に殺された。その事件は記事にされることもなく、街は少女の死を忘れたかのように平穏を装う。

殺されたミンジュ

© 2014 KIM Ki-duk Film.

事件から1年が経った頃、ミンジュの死の真相を執拗に追いかける謎の集団“シャドーズ”が暗闇の中で不気味に動き出す。彼らはまず、ミンジュ殺害に関わった7人の男のうち1人を拉致し、拷問の末に自白を引き出した。

殺されたミンジュ

© 2014 KIM Ki-duk Film.

“シャドーズ”は変幻自在に姿を変えながら、少女殺害事件の実行犯を一人、また一人と誘拐していく。自白を強要された容疑者たちのそれぞれの証言によってミンジュ殺害の真実が明らかになっていく……


映画を見る前に知っておきたいこと

2014年ベネチア国際映画祭で本作が作品賞に輝いたベニス・デイズ・セクションとは、「政治的配慮や商業的思惑などを排除して自由な立場で世界中の監督を紹介すること」を目指したカンヌ国際映画祭の監督週間に該当する部門である。

ここでの評価がキム・キドクらしい、一筋縄ではいかない作品であることを物語っている。

社会派映画として

ベネチア国際映画祭金獅子賞に輝き、韓国映画界に初めて世界三大映画祭の最高賞をもたらしたキム・キドク監督の代表作『嘆きのピエタ』(12)。韓国で社会問題となっている高利貸しをテーマに、弱者を食い物にする取り立て屋の苦悩から拝金主義に飲み込まれた韓国社会が抱える闇を炙り出してみせたこの作品で、彼は社会派監督としての切れ味を見せつけた。

そんなキドク監督は本作でも、サスペンスフルな群像劇の中に“民主主義の危機”を描き出そうとしている。それを象徴するのが殺された少女の名、ミンジュは韓国語で“民主”を意味する言葉だ。

少女殺害に関わった者を追い詰める謎の集団“シャドーズ”のメンバーは社会の犠牲者と言える人々であり、彼らが掲げるのは社会正義という名の復習である。強者を想起させる軍人や警察の制服をまとって高揚するその姿からは、虐げられた者がまた別の誰かを虐げるという社会の矛盾が感じ取れる。

決して多くを語ってくれる映画ではないので、スリリングな展開の裏側に社会的なメッセージを共有できれば、また違った印象を残してくれるはずだ。

-ミステリー・サスペンス, 洋画
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