映画を観る前に知っておきたいこと

【レッドタートル ある島の物語】セリフがないからこそ伝わるジブリ最新作

レッドタートル ある島の物語

どこから来たのか、どこへ行くのか、いのちは?

スタジオジブリの最新作は、初となる海外との共同製作によりフランスから日本へ逆輸入されてきました。

2000年に公開されたフランスの短編アニメーション『岸辺のふたり』は、たった8分間でひとりの女性の人生を丹念に描き、アカデミー賞短編アニメーション映画賞をはじめ、世界中で賞賛されました。そして同作を観たスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が、この作品の監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットの長編を見てみたいと思ったことがこの映画のはじまりでした。

その後、高畑勲監督の助言を受けながら、海の向こうで8年もの歳月をかけてスタジオジブリの最新作は完成します。2016年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の特別賞を手土産に、この秋ついに日本上陸を果たします。

この映画はセリフのない無声映画です。これまでのジブリ作品に比べると圧倒的に敷居が高くなっています。ただマイケル監督の『岸辺のふたり』を観れば、映画との距離はぐっと近くなると思います。途中『岸辺のふたり』についても紹介しているので、そこで是非この名作に触れてみてください。


予告

あらすじ

どこから来たのか
どこへ行くのか いのちは?

嵐の中、
荒れ狂う海に放りだされた男が
九死に一生を得て、
ある無人島にたどり着いた。
必死に島からの脱出を試みるが、
見えない力によって
何度も島に引き戻される。
絶望的な状況に置かれた男の前に、
ある日、
一人の女が現れた

引用:公式サイト


映画を観る前に知っておきたいこと

今回のスタジオジブリ最新作は、過去の作品の中にあって異彩を放っています。監督がフランス人であることや海外との共同製作がその理由です。映画を知る上でまず、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが監督を務めることになったきっかけを紹介します。

その中で『レッドタートル ある島の物語』が生まれる直接の呼び水となった短編が存在します。フランスの短編アニメーションですが、たった8分間でセリフもないので世界の誰が観ても伝わる作品です。途中に動画があるので劇場に足を運ぶ前にそこで8分間だけ立ち止まってください。スタジオジブリ最新作をさらにおもしろくしてくれます。

最後にスタジオジブリとカンヌ国際映画祭との関係についても紹介しています。

スタジオジブリ初の海外との共同製作

本作はフランスのアニメーターであるマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが監督を務め、スタジオジブリがサポートする形で製作されている。

マイケル監督の短編アニメ『岸辺のふたり』を観たスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が、この作品の監督の長編を観てみたいと思ったことが共同製作のきっかけだった。

マイケル監督自身が敬愛する高畑勲監督に製作全般の助言をもらい、シナリオ、絵コンテ作りから効果音、音楽に至るまで、スタジオジブリとマイケル監督の間で何度も打ち合わせが重ねられた。海を越えたその作業は、実に8年もの歳月に及んだ。

ただそれでも、作品というのは監督の影響下に置かれるものだ。

日本ではスタジオジブリ最新作として紹介される機会が殆どかもしれないが、僕としてはマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督による初の長編アニメーションという意味の方が大きい。

スタジオジブリ最新作は、この違いを楽しむことが重要だ!


マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督作『岸辺のふたり』

作品が監督のものだとするなら、マイケル監督がスタジオジブリと共同製作するきっかけとなった短編『岸辺のふたり』は是非とも押さえておきたい。

セリフのない短編であるこの作品はすべての人に直感的に訴えかけてくれる。そして、同様にセリフがない無声映画である『レッドタートル ある島の物語』の敷居をぐっと下げてくれるはずだ。この短編にある岸辺の描写は『レッドタートル ある島の物語』ともどこか通じている。

物語は、父と生き別れた少女が帰りを待ちながら成長してゆく姿を映し出す。ひとりの女性の人生を描き切ったこの短編は、たった8分間とは思えないほど丹念な描写が続く。観客にユーモアを伝え、静かな感動を呼び起こさせるための間の取り方には感心させられるばかりだ。

事実、マイケル監督は今回が62歳での長編処女作だが、短編作家としてのキャリアは長い。『岸辺のふたり』ではアカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞し、短編作家としてひとつの頂点に達している。

『岸辺のふたり』(Father and daughter)

ジブリ作品とカンヌ国際映画祭

『レッドタートル ある島の物語』は、ジブリ作品がカンヌに初めて招待された作品となった。

より芸術性の高い国際映画祭であるカンヌで、しかも「ある視点」部門で特別賞の受賞はこれまでのジブリ作品との違いを予感させる。

この「ある視点」部門とは、あらゆる種類のヴィジョンやスタイルを持つ「独自で特異」な作品を選出するための部門で、本選のコンペティション部門からは独立している。

「ある視点」部門はその名の通り一風変わった癖の強い作品が多いことが大きな特徴だ。ただ、ここで評価されると興行的な成功が難しいイメージもある。

もし映画がヒットに恵まれなかったとしても、ジブリ作品の中で最も芸術性の高い作品として評価される可能性は秘めている。

特別賞は、映像と音のポエジーに溢れるこの映画自体が特別と評価されての受賞だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。