映画を観る前に知っておきたいこと

【先生と迷い猫】実際の猫疾走事件から生まれた心温まる物語

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先生と迷い猫

再開発が進み、商店街は寂れ、昔ながらのご近所付き合いもなくなってしまった埼玉県・岩槻で実際にあった地域猫疾走事件を描いた木附千晶のノンフィクション小説「迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生の物語」をベースに、『60歳のラブレター』の深川栄洋監督がオリジナルキャラクターやストーリーを追加して映画化。

主人公のカタブツでヘンクツな校長先生を演じるのは、大ヒット作『太陽』から実に9年ぶりに主演を務めたイッセー尾形。その個性的かつ圧倒的な存在感の演技によって唯一無二のキャラクターを生み出す。そして、猫のミイを演じるのはNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で夏さんの飼い猫・カツエ役でデビューした三毛猫のドロップ。なんと代役なし一匹で全編演じ切り、その天才女優ぶりを発揮している(白戸家のお父さんだって何匹もいるのに大したものである)。また、校長先生とミイを取り巻く街の人たちは染谷将太、北乃きい、岸本加世子ら実力派俳優が演じ、ほっこり温かい猫と街と夫婦の愛の物語に仕上がっている。

    • 製作:2015年,日本
    • 日本公開:2015年10月10日
    • 上映時間:107分
    • 原題:『先生と迷い猫』
    • 原作:小説「迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生の物語」木附千晶

迷子のミーちゃん~地域猫と商店街再生のものがたり~

予告

あらすじ

定年退職した校長先生、森衣恭一は、妻に先立たれて1人暮らし。そのカタブツさとヘンクツ­­さから近所では浮いた存在だった。訪ねてくるのは、森衣が趣味で撮りためた写真を、町の­資­料として保管したいという市役所勤務の青年と、亡き妻が餌付けをし、可愛がってい­た野­良猫・ミイぐらいだった……先生と迷い猫猫が好きではない森衣は、ミイをなんとか追い払うとするが、どんな­に追っ払っても毎日やってきて、妻の仏壇の前に座っている。まるで死んだ妻が­見えるか­のように。その姿を見ると、森衣はどうにもイライラさせられるのだった。し­かし、ある­日突然、ミイが来なくなる。そうなるとなぜか心配になり探し始める森衣。すると自­分の他にも、­ミイを探している人たちがいることに気付くのだった……先生と迷い猫亡き妻が通った美容院にはミイによく似た「迷い猫を探しています」というポスターが。かつての教え子で、今は大学を休学して実家のクリーニング屋を手伝う真由美はミイをソラと呼んでいた。学校でいじめにあっていた中学生・さぎりはミイをちひろと名付け、学校帰りのバス停でちひろに話し掛けることで生きる勇気をもらっていた。それは皆、ミイに餌をやり、語り­かけることで、­どこか救われていた人たちだった。先生と迷い猫彼らとミイを探すことで、ミイを通­して亡き妻を思い­だすことを避けていた自分に気づいていく。妻に先立たれた悲しみに耐えられず早く忘れてしまいたかった森衣にとっても、ミイは­大切な存在だったのだ。その気持ちに向き合ったことでミイにもう一度会いたいと心から願い必死にミイのことを探すが……

映画を見る前に知っておきたいこと

深川栄洋監督の視点

本作の監督を務める深川栄洋監督は『60歳のラブレター』(2009年)『白夜行』(2011年)『神様のカルテ』(2011年)などを手掛けた監督である。中でも『60歳のラブレター』は本作同様に着想のおもしろい作品の一つである。『60歳のラブレター』とは、もともと住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)主催で2000年より毎年行われている、長年連れ添った夫婦が口に出しては言えない互いへの感謝の言葉を1枚のハガキにつづる応募企画であった。その企画から着想を得て “語り尽くせないほどの「ありがとう」。”というキャッチフレーズで映画化した。文字通り熟年男女のラブストーリーで、3組の登場人物の喜びや迷いを描きつつ、人と人との絆の大切さを伝えてくれる。

本作も実際にあった地域猫疾走事件から着想を得ているが、深川栄洋監督は少し変わった視点から人間ドラマを描くことが出来る監督だ。どちらの作品もスタートラインは変わっているものの、作品に込められたテーマは普遍的なものである。『60歳のラブレター』はスマッシュヒットを記録したが、本作も万人に伝わる映画だと思う。ほっこり温かい雰囲気とは裏腹に深川栄洋監督の鋭い人間描写が冴える。

深川栄洋監督の過去の作品

  • 全力ボンバイエ!(1999年)
  • ジャイアントナキムシ(1999年)
  • 自転車とハイヒール(2000年)
  • Open Timer*s ラヴイボ(2001年)
  • 私が幸せでいるという事(2002年)
  • ムービーボクシング(2003年)
  • 自転少年(2004年)
  • 紀雄の部屋(2004年)
  • 狼少女(2005年)
  • アイランドタイムズ(2006年)
  • 真木栗ノ穴(2007年)
  • 晴れた日は図書館へいこう(2007年)
  • 体育館ベイビー(2008年)
  • 同級生(2008年)
  • 非女子図鑑「B」(2009年)
  • 60歳のラブレター(2009年)
  • 半分の月がのぼる空(2010年)
  • 白夜行(2011年)
  • 洋菓子店コアンドル(2011年)
  • 神様のカルテ(2011年)
  • ガール(2012年)
  • くじけないで(2013年)
  • 神様のカルテ2(2014年)
  • トワイライト ささらさや(2014年)

-ヒューマンドラマ, 邦画

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