映画を観る前に知っておきたいこと

【黒衣の刺客】台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督の最新作

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黒衣の刺客

第68回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督8年ぶりの最新作。唐の時代の中国を舞台にした武侠時代劇。暗殺者として育てられた美しくも孤独な女刺客・隠娘(インニャン)の数奇な運命を、慎み深く描き”アクション”という枠を越えた壮大なドラマに仕上がっている。製作期間5年、総制作費13億円。

ヒロインの女刺客・隠娘を演じたのはスー・チー。2005年のホウ・シャオシェン監督作『百年恋歌』に続き本作でも主演を務める。標的となる田季安には『レッド・クリフ』シリーズで知られるチャン・チェン。遣唐使である日本人青年を妻夫木聡、その妻を忽那汐里が演じている。

日本での公開は、ホウ監督の強い希望により「日本オリジナル・ディレクターズカット版」での公開となる。 インターナショナル版ではカットされた日本での撮影シーンが含まれ、女優の忽那汐里が出演している。


  • 製作:2015年,台湾・中国・香港・フランス合作
  • 日本公開:2015年9月12日
  • 上映時間:108分
  • 原題:『聶影娘 The Assassin』

予告

あらすじ

中国、唐の時代。13年前に女道士に預けられた隠娘(インニャン)は両親のもとに帰ってきた。両親は涙を流し迎えるが、美しく成長した彼女は暗殺者として育て上げられていた。黒衣の刺客女刺客となった隠娘の標的は暴君の田季安(ティエン・ジィアン)。かつての許嫁であった。どうしても田季安に止めを刺すことができない隠娘は、暗殺者として自分の中に残る情愛に戸惑う。黒衣の刺客

「なぜ殺めるのか」

そのことで、隠娘は暗殺者として生きてきた自分の運命を見つめ直す。黒衣の刺客ある日、窮地に追い込まれた隠娘は、難破した遣唐使船の日本人青年に助けられる。隠娘は数奇な運命に翻弄されていく・・・


映画を見る前に知っておきたいこと

台湾映画の歴史とホウ・シャオシェン監督

本作は台湾・中国・香港・フランスの合同製作であるが、監督は台湾の巨匠ホウ・シャオシェンが務めている。ホウ・シャオシェン監督は本作でカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しているが、1989年『悲情城市』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)を受賞したこともある。これは中国語圏で史上初の快挙であった。90年代以降、台湾映画も世界で評価されるようになってきたが、台湾でも映画の苦難の歴史がある。

台湾では日本統治時代の1900年から映画製作がはじまっている。しかし、1937年に日中戦争が勃発すると1945年までは実質的に製作されていない。台湾でも戦争によって映画産業が妨げられた歴史がある。その後は、中国大陸の映画製作者が台湾へと渡ってきたことで、1949年以降台湾映画は再び発展し始めたが、政府の国家統一に映画が使われたことで台湾語などによる映画は徐々に減少していった。

1960年代には、台湾は近代化が始まろうとしていた時期であった。政府は、経済・産業・教育の発展に重点を置いた時代で、伝統的な道徳観を養うものとして映画は社会経済構造が急速に変化する中で重要な役割とされていた。

1980年代に入ると、ホームビデオが普及し、映画鑑賞が一般的なものとなった。しかし、高い娯楽性を有することで知られていた香港映画などの流入が台湾映画を衰退させる要因となっていた。それに対抗するために台湾映画のニューウェーブが始まる。この頃から政治と映画が切り離されてきたように思う。ニューウェーブ映画は台湾人を写実的で現実的、共感的な描写を特徴とし、台湾の人々の生活を真実の物語で描き出した。リアリズムの追求により、世界でも評価される映画が誕生した。1994年には蔡明亮監督の『愛情萬歳』がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得している。台北の高級アパートに住んでいるヤングアダルトたちの孤独と絶望、恋愛模様が描かれたこの作品は第2次ニューウェーブと呼ばれ、台湾映画はさらなる発展を遂げていった。

これが大まかな台湾映画の歴史だが、いかに映画産業や映画そのものが発展してきたかを知るとホウ・シャオシェン監督がカンヌやヴェネチアで評価されることが、その発展を示していることがわかる。今ではカンヌ国際映画祭の常連であり、世界中で多くの賞を獲得する台湾を代表する監督だ。

1980年
『ステキな彼女』
1981年
『風が踊る』
1982年
『川の流れに草は青々』
1983年
『坊やの人形』(オムニバス作品/第1話「坊やの人形」)
『風櫃の少年』
❖ナント三大陸映画祭グランプリ
1984年
『冬冬の夏休み』
❖ナント三大陸映画祭グランプリ
1985年
『童年往事―時の流れ―』
❖ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞
1987年
『恋恋風塵』
❖ナント三大陸映画祭最優秀撮影賞・編集賞
1989年
『悲情城市』
❖ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)
1993年
『戯夢人生』
❖カンヌ国際映画祭審査員賞
1995年
『好男好女』
❖カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
1996年
『憂鬱な楽園』
❖カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
1998年
『フラワーズ・オブ・シャンハイ』
❖カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
2001年
『ミレニアム・マンボ』
❖カンヌ国際映画祭高等技術院賞
2003年
『珈琲時光』
❖ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品
2005年
『百年恋歌』
❖カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
2007年
『それぞれのシネマ』(オムニバス作品/「電姫戯院」)
❖カンヌ国際映画祭60周年記念作品
『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』
❖カンヌ国際映画祭ある視点部門出品作品
2015年
『黒衣の刺客』
❖カンヌ国際映画祭最優秀監督賞

-アクション, ヒューマンドラマ, 洋画

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