映画を観る前に知っておきたいこと

【天使が消えた街】あのアマンダ・ノックス事件の闇の奥に隠された真実

天使が消えた街

イタリアで実際に起き、国際的な注目を集めた「イギリス人留学生殺人事件」を、一人の映画監督の視点から描いた社会派ドラマ。監督は最近『イタリアは呼んでいる』で大ヒットを飛ばしたマイケル・ウィンターボトム。

主人公の映画監督トーマス役を「ラッシュ プライドと友情」のダニエル・ブリュール、取材に協力するジャーナリスト役を「アンダーワールド」シリーズのケイト・ベッキンセール、トーマスの窮地を救う女子大生役を世界的トップモデルのカーラ・デルビーニュがそれぞれ演じた。


  • 製作:2015年,イギリス・イタリア・スペイン合作
  • 日本公開:2015年9月5日
  • 映倫区分:R15+
  • 上映時間:101分
  • 原題:『The Face of an Angel』

予告

あらすじ

トーマスとシモーン

2011年、イタリア・ローマ。映画監督トーマス・ラング(ダニエル・ブリュール)は、4年前に起こった殺人事件をリサーチするためにこの地へ赴いた。プライベートでは妻と離婚し、最愛の娘ビーの親権を争って揉めていて、仕事ではこの数年なかなか思い通りの映画を撮ることが出来ていない。トーマスは、4年前の事件を題材にした新しいプロジェクトに再起の意気込みを燃やしていた。
天使が消えた街
「映画化するならフィクションにすべきよ。そうでなければ真実は描けない」と彼にアドバイスをしたのは、シモーン・フォード(ケイト・ベッキンセイル)。ローマ在住のアメリカ人ジャーナリストで、事件を詳細に語るノンフィクションの著者でもある。
天使が消えた街

4年前の事件

4年前に起こった殺人事件は、イギリス人留学生エリザベス・プライスが街外れの共同フラットで半裸の遺体として発見されたことから始まった。殺人容疑がかかったのは、アメリカ人留学生ジェシカ・フラー、その恋人のイタリア人青年、エリザベスのバイト先のバー経営者の3人で、ほどなく逮捕された。

しかし、この事件は誰もが予想をしなかった異様な展開を見せていく。

ジェシカの美しくセクシーな容姿と奔放な振る舞いに注目が集まるや否や、各国のメディアは虚実を取り混ぜスキャンダルを連発。真実など知らぬと言わんばかりにあちこちに火を付けてまわるのだった。
天使が消えた街
そして4年後の今、一審で有罪判決を受けたジェシカは、世界中が注目する控訴審を控えていた。

狂ったメディア

映画製作の為にジェシカの控訴審に注目していたトーマスは、シモーンと共に現地を訪れた。しかしそこにあったのは、想像を絶するメディアの狂騒だった。読者の好奇心を煽ることだけを目的としたイギリスのタブロイド紙記者、ジェシカの家族の独占取材を目当てに彼女たちをサポートするポーズを見せるTVプロデューサー。

トーマスは取材を終え、ロンドンの自宅に一時帰宅した。そこで映画制作関係者とのミーティングに参加するが、まだ何も決まっていない段階にもかかわらず、有名女優の起用ばかりに興味を示す彼らに違和感を覚えてしまう。

プライベートでの問題とこの事件との関わり方に頭を悩ませていたトーマスは、この作品を事件をただ再現したサスペンス映画ではなく、何か奥に潜んでいるらしい“真実”に寄り添った作品にしたいと考えるようになっていく。
天使が消えた街

事件の闇に潜む愛の物語

そんな公私の問題の迷宮から救い出してくれたのは、イタリアの街のガイドに雇った大学生メラニー(カーラ・デルヴィーニュ)だった。何かと世話を焼いてくれ、若々しいメラニーに行動を共にするに連れて娘に近い感情を持つようになったトーマス。
天使が消えた街
そうして彼は再起を賭けた脚本に、何者かによって何もかもを奪われた被害者エリザベスとその遺族に寄り添った“愛の物語”を綴っていく。


映画を見る前に知っておきたいこと

アマンダ・ノックス事件とマイケル・ウィンターボトム監督

事件が起こったのは2007年。イタリアのペルージャにある共同フラットの一室でイギリス人留学生の遺体が見つかった。容疑者として逮捕されたのは、ルームメイトのアメリカ人留学生アマンダ・ノックスとその恋人のイタリア人男性。そして麻薬密売などに関わるコートジボワール人の男の3人だった。

そうして一件落着したかに見えた事件は、意外な方向へ熱を帯びていく。容疑者であるアマンダが美しい女性だったため、報道合戦は米英のメディアまで飛び火。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景は大げさに誇張され、アマンダや被害者のプライベート情報がネット上に拡散。事件の本質とはかけ離れたところで暴走を始め、様々な問題が噴出する。さらに様々な要因が絡み合い、裁判の判決は二転三転を繰り返して混乱に拍車をかけた。

こうして“アマンダ・ノックス事件”はイタリア犯罪史上、最も国際的に注目を浴びた事件として歴史に刻まれることになった。

事件の真実

サスペンスドラマやアマンダ本人による事件の体験記など、この事件を題材にした作品が熱を帯びた事件の尾ひれに注目する中、ウィンターボトム監督は実に冷静にこの事件を見つめていた。

この事件に対しての彼の興味は、「悲しまれるべきこの凄惨な事件が、美しい二人の女性を主人公に仕立て上げ、一種のメディア商品として大衆に消費されていったのはなぜか」ということだった。白熱する報道合戦の奥深くに潜む事件の闇を冷静に、それでもどこまでも人間的に見つめて描かれたのが本作『天使の消えた街』である。

ウィンターボトム監督は、興味を駆り立てるために真実を虚構に投げ入れるメディアに疑問を投げ掛けながら、真犯人や動機といった事実を尻目に、愛を以ってこの事件の真実を見つめたのだ。

映画ならではのアプローチ

全く映画らしい、映画ならではのアプローチが素晴らしい。こういうことが可能であって、且つ注目されうるのが映画の良い所だと思う。この映画でウィンターボトム監督がしようとしたことをメディアがやっても。きっと誰にも注目もされないだろう。

こういった問題はメディアが悪者にされがちな話だが、実際に興味を持つのは大衆の方である。メディアを動かしているのは、大衆ということになる。堂々巡り。

そのことを考えると「映画化するならフィクションにすべきよ。そうでなければ真実は描けない」というシモーンの言葉に重みが残る。

事実と違い、真実は本当に人それぞれだ。フィクションであればこそ、あらゆる手を使ってキャラクターの心象を表現することができる。観客に伝えることができる。真実に着目する視点、それを分析する観察眼、そして表現する手腕。

本当にこの人マイケル・ウィンターボトムは天才だ。

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