映画を観る前に知っておきたいこと

【鏡は嘘をつかない】海のジプシーで暮らす少女と母親の希望の物語り

鏡は嘘をつかない

日本でインドネシア映画の傑作に触れる稀な機会をぜひ!海で生き、海で死ぬ、海のジプシーの中で暮らす少女と母親の希望と再生の物語り。

2011年に東京国際映画祭で上映され、自然・環境・エコロジーをテーマにしたトヨタ・アース・グランプリ受賞作品。この映画に映された“水の世界”は、まさに祖国を“水の国”と呼ぶインドネシアの人々のアイデンティティーだ。

世界遺産でもあるワカトビの美しい海域で暮らす漂海民バジョ族の10歳の少女パキスは、漁に出たきり行方不明になった父の帰りをひたすら待ち続ける……


  • 製作:2011年,インドネシア
  • 日本公開:2016年6月4日
  • 上映時間:100分
  • 原題:『Laut bercermin』

予告

あらすじ

インドネシアのワカトビで暮らす漂海民バジョ族の10歳の少女バキスは漁に出たきり行方不明になった父の帰りをひたすら待ち続けている。バジョ族で鏡は真実を写す神聖なものされている。鏡は嘘をつかないパキスは父からもらった鏡を唯一の希望として、鏡に父の姿が現れると信じていた。母親のタユンはそんなパキスを心配しながら、自分もまた夫の死を受け入れられずにいた。タユンはその不安を隠すように顔に白塗りを施す……鏡は嘘をつかないある日、イルカの生態を研究するため青年トゥドが村へとやってきたことで、母娘の日々も少しずつ変わっていく。そして2人は父親がいないという不安と葛藤の中、やがて事実を受け入れてゆく……


映画を見る前に知っておきたいこと

素晴らしいインドネシア映画に出会える稀な機会をぜひ!

本作は2011年に製作された映画だが、当時の東京国際映画祭で上映され、トヨタ・アース・グランプリ受賞したことから、自然をテーマにした評価の高い作品であることがわかる。インドネシア本国で最優秀新人監督賞、脚本賞など数多くの賞に輝いたのを始め、世界中の映画祭でも多くの賞を獲得し、脚光を浴びた。

本作はワカトビの珊瑚礁の海とそこで暮らす漂海民バジョ族を映した映像美に、父の帰りを待つ少女と母親の希望と再生の物語りを落とし込むことでインドネシアの自然や伝統を伝えてくれる。そこには、世界中で起こる自然の喪失による温暖化や気候変動という社会派なメッセージまで含まれる。

しかし、それらは決して不安を助長するように伝えられるわけではなく、あくまで作品全体は希望に覆われている。ストーリーも母娘の悲劇ではなく、父親がいなくなったという事実を受け入れるまでの心の変化を描いた再生へと向かうものであり、映画のテーマも環境問題に目を向けて欲しいという切な願いだ。

そして、本作の素晴らしいところはこれらのメッセージにしっかりとした説得力を持たせるリアリティだ。カミラ・アンディニは本作が長編初監督だが、これまでに自然をテーマにしたドキュメンタリーを多く撮ってきた。本作の予告編を見ても感じると思うが、その映像からはドキュメンタリーのような自然さが伝わってくる。

決して劇場公開数が多い作品ではないが、僕は素晴らしいインドネシア映画を紹介できることは嬉しく思う。

かつて本作の監督カミラ・アンディニの父であり、インドネシアを代表する映画監督ガリン・ヌグロホのストリート・チルドレンをテーマにした映画『枕の上の葉』(98)が東京国際映画祭審査員特別賞を受賞し、日本で劇場公開されているが、インドネシア映画が日本で公開されることはほとんどないので、見られる環境にある人はその稀な機会を楽しんでみてはどうだろうか。

ちなみにガリン・ヌグロホ監督は本作のプロデューサーを務めている。ここにも娘と父親の物語りが存在していることも本作を温かい作品にしているように思う。

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