映画を観る前に知っておきたいこと

【ミケランジェロ・プロジェクト】ナチスの手によって失われるはずだった芸術を救った実在の組織

ミケランジェロ・プロジェクト

第二次世界大戦中にナチス・ドイツに奪われ、破壊されるはずだった美術品を命がけで救い出して後世に残した、実在する組織の活躍を描いたサスペンスドラマ。「豪華キャストで贈る・・・。」耳にタコというか、ありふれ過ぎて聞き流してしまう謳い文句だが、本当にキャストは豪華。

監督から製作・脚本・主演までを務めたジョージ・クルーニーをはじめ、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダン、ケイト・ブランシェットなどなど。名前を知らない人でも「あ!この人見たことある!」と唸ってしまうであろう、ハリウッドの顔と言っても過言ではない面子が揃った。


  • 製作:2015年,アメリカ
  • 日本公開:2015年11月6日
  • 上映時間:118分
  • 原題:『The Monuments men』
  • 原作:小説「ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争」ロバート・M・エドゼル
  • ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争

予告

あらすじ

失われる芸術品

1943年、世は第二次世界大戦真っ只中。ナチス・ドイツが侵攻を進める地域では、貴重な美術品が強奪され、ヒトラーやその側近の手に渡っていた。戦火に合い破壊される美術品も数知れず、さらにはナチス・ドイツが撤退する際には美術品を故意に破壊してしまうため、ヨーロッパでは多くの文化財が失われていた。

この事態を重く見たハーバード大学付属美術館長のフランク・ストークス(ジョージ・ルーカス)は、時の大統領フランクリン・ルーズベルトに美術品の救済を直訴する。しかし、大統領からは人手が足りない事を理由に、ストークス本人が戦線に向かうよう要請を受けるのだった。ミケランジェロ・プロジェクト

モニュメンツ・メン結成

1944年3月、ストークスは美術品救出作戦を実行するため、アメリカ各地を回って6人の美術専門家を招集。特殊部隊「モニュメンツ・メン」を結成し、ヨーロッパへ発つ。まずは軍事訓練と作戦会議を兼ねて、イギリスの英軍基地へ向かい、そこで新たなる仲間を得て、人数は7人となった。ミケランジェロ・プロジェクト7月、「モニュメンツ・メン」はフランス・ノルマンディへ上陸した。現地では理解のない将校たちの協力は得られなかった。それでも戦争の火種から美術品を守るため、手分けしてヨーロッパの各地を探し回るも、価値のある美術品は全てナチスドイツに奪われた後だった。
ミケランジェロ・プロジェクト

最前線、パリ

パリでは美術品の強奪を指揮する親衛隊士官、ヴィクトール・シュタールとその秘書、クレール・シモーヌが何やら一騒動起こしていた。シュタールに嫌悪感を抱きながらも忠実な秘書を演じるシモーヌは、彼らが握る美術品の行方に目を光らせていた。ミケランジェロ・プロジェクトそんな中、レジスタンス活動をしているシモーヌの弟が、シュタールの美術品の積まれたトラックを盗もうとして射殺され、そのことをからシモーヌにも疑いの目がかかってしまう。

連合軍は今にもパリに迫ってきている。シュタールは戦線の危うくなったパリから脱出し、シモーヌはまんまと美術品を持って逃げられた悔しさから、いつか彼らを見返してやると心に誓うのだった。

一方、ドイツの敗戦が間近に迫るに連れて、美術品の捜索に猶予が無くなってきているモニュメンツ・メンの一人は、ヒトラーが美術品を公開しようとしていた「総統美術館」の館長に会っていた。彼が言うにはこうだ。

「美術品の行方を知りたければ、シモーヌに会え」

最終局面

戦争も終局を向かえ、敗北を悟ったヒトラーは全ての破壊を命じる「ネロ指令」を発令。美術品もその例外ではなく、世界的な資産が今まさに失われようとしていた。ミケランジェロ・プロジェクト一体、美術品はどこに隠されているのか・・・。一行の猶予も許されない中、モニュメンツ・メンは一体どれだけの美術品を救うことができるのか・・・。


映画を見る前に知っておきたいこと

ネロ指令

「ネロ指令」とは、かつて自国ローマを焦土へ変えたという伝説を持つ“皇帝ネロ”の名になぞらえて、後世の歴史家にそう呼ばれている、いわゆる「焦土作戦」であった。

戦後の復興や生活のことを考えた軍需大臣から命令の中止を訴えられるが、ヒトラーは命令を撤回することはなかった。その際のヒトラーの言葉には、彼の狂気が滲み出ているように感じる。

「戦争に負ければ国民もおしまいだ。(中略)なぜなら我が国民は弱者であることが証明され、未来はより強力な東方国家(ソ連)に属するからだ。いずれにしろ優秀な人間はすでに死んでしまったから、この戦争の後に生き残るのは劣った人間だけだろう。」

ヤケクソかと思いきや、至って冷静にこの作戦を思案していたかと考えると背筋が凍る。あの戦争でヒトラーが勝っていたら、一体どんな世の中になっていたのか。

余談だが、今現在も多くの観光客で賑わう華の都、フランス・パリも街ごとこの破壊工作の対象であった。パリを救った男の一夜の駆け引きを描いた映画もあるので、興味がある人はこちらの記事を参照してほしい。

“劣った人間に奪われるくらいなら壊してしまえ”とは、なんとも凄まじい狂気。

興行成績と評価

ジョージ・クルーニー監督の作品の中では、トップの初動興行収入を記録したものの、批評家からの評価は著しくなかったようだ。一応監督本人から「80%は実際にあった出来事だ」という言葉は貰っているものの、批評文の多くでは歴史考証が甘い点が指摘されている。

とある証言では、この映画のモデルとなった組織「MFAA」は多い時で30人前後だったと言われているが、映画では7人に減らされており、メンバーは架空の人物に置き換えられている。さらに組織の起源についても、映画で語られる史実が正しいかどうかに疑問を呈する声もある。ミケランジェロ・プロジェクトとはいえ、豪華キャストと実話であるという宣伝文句から、興行収入は上場。客層は30代後半が多かったそうだ。

予告動画にある「ハリウッドのトップが」というコピーにも納得の豪華キャスト。ジョージ・クルーニーをはじめ、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダン、ケイト・ブランシェットなどなど、そうそうたる顔ぶれ。

予告動画が若干コメディタッチなのが気になる。テーマがテーマだけに、こういう映画はもっとシリアスに見たいというのが個人的な気持ちではある。

しかし、前述した豪華キャストに加え、ハリウッドの特徴である「大衆的」という点から、比較的見やすい映画であるという意味では、この映画がMFAAという組織を再評価する助けになることは間違いない。

なぜ美術品が大切か

最後の晩餐ヒトラーが世界中からかき集め、MFAAが命を賭けてまで守ろうとした“芸術品”には、果たしてどれ程の価値があるのか。

ヒトラーが収集した美術品の数は二万点を越えるとも言われていて、その中には世界的な名画も数多く含まれていた。当然ながら「人類の資産」と言われれば納得してしまうし、漠然と“人類にとって大事なもの”と思ってはいるが、具体的にどう価値があるものなのか。改めてその価値について考えてみようと思う。

芸術の起源

研究者の中にも、芸術の起源をおよそ17000年も前の洞窟絵画に求める人は多い。「なぜ芸術が生まれたか」については議論に花が咲く話題であるが、僕は「美に対する純粋な憧れ」だと考えている。

現代、美しいものや瞬間に出会えば、誰もがスマホを取り出して写真を撮ろうとするあの気持ちで洞窟に絵画を描いたのではないか。人類はそんな純粋な気持ちから美しさを追い求めた。「美しさとは一体何か」芸術家たちは皆、その問いに真正面から取っ組み合い、歴史を重ねて来た。

人間の探求

“美の追求”とはつまり、人間の探求である。古代ギリシャでは、人間の体が完璧な美を表現するものとして彫刻のモチーフに選ばれた。ヨーロッパに代表される宗教絵画や、ロマン派、印象派に連なる歴史は、民主化が進む当時の世界を良く描いている。

現代では、芸術はデザインという形に落とし込まれ、“機能美”という使う人を思いやる“形”には紛れもない美しさが内在している。

そう考えると、芸術とは人が“人間”を考えてきた歴史そのものなのだ。その価値は、近代までに人類が考察し、発展せしめてきたあらゆる学問の膨大な記録となんら変わりない。そうして芸術は、時には権力の象徴として、時には神の代理として、過去から現在まで、出会った人に多大な影響を与えてきた。

だからこそ、僕は命を賭けて守るべき価値のあるものだと思う。ここで改めてMFAAのメンバーとその活動に賞賛を贈りたい。

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