ロンドンを舞台に、初老のカンボジア系中国人女性とイギリス人青年の心の交流を描いたヒューマンドラマ。監督・脚本は、本作が長編デビューとなるホン・カウ。自身の母親への想いを投影させた作品になっている。主演は『007』のœ役で人気のベン・ウィショー。ゲイの青年役で愛する人を失った痛みを繊細に浮かび上がらせる。また1944年に中国でヒットした山口淑子(李香蘭)の名曲「夜來香」が物語を彩る。
- 製作:2014年,イギリス
- 日本公開:2015年5月23日
- 原題:『Lilting』
- 上映時間:86分
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 不思議な共演
- 3.2 日本人にとってちょっとした幸運
予告
あらすじ
ロンドンの介護ホームで孤独に暮らすカンボジア系中国人女性ジュンは、英語ができないため息子のカイが面会に来てくれる時間だけが楽しみだった。カイはジュンとロンドンを繋ぐ唯一の存在だった。しかしジュンは息子が友達のリチャードと暮らすことを悩んでいた。そのために自分をこんなホームに入れるなんて。大切なのは家族なのに。そんな文句をカイに言う。ジュンはリチャードを毛嫌いしていたが、リチャードはジュンのことをいつも気にかけ優しかった。
カイは自分がゲイであること、恋人リチャードを深く愛していることを母に告白できず悩んでいた。そんなある日、カイが亡くなったと一報が届く。孤独なジュンを心配したリチャードは、カイの”友人”を装ったまま、ジュンの面倒を見ようとする。違う文化、違う世代、違う言葉、まったく生き方の違うジュンとリチャード。しかし愛する人を失った痛みは共感している。ただそれは愛ゆえに大きな亀裂が生まれてしまう・・・
映画を見る前に知っておきたいこと
不思議な共演
まず監督のホン・カウの幸運を賞賛したい。長編デビュー作でサンダンス映画祭のオープニングを飾り、見事撮影賞を受賞し評価を得たことも幸運だが、この作品のキャスティングが叶ったことが何より素晴らしい。『クラウド アトラス』や『007』のœ役で今イギリスで注目の俳優ベン・ウィショーとアジア映画の伝説のヒロインとして知られるベテラン女優チェン・ペイペイとの共演はとても不思議なコンビネーションだ。ホン・カウの熱意がこのありえないような共演を実現させた。そして素晴らしい化学反応も。
日本人にとってちょっとした幸運
この映画はホン・カウ監督の繊細な演出が随所に光る。自身も移民で中国語と英語のバイリンガルであり、母親は映画の中のジュンのように今もまだ英語があまりできない。繊細な演出というのはどこか優しさを感じさせるもので、母親への想いを投影していることがそうした演出に繋がっているように思う。
僕が好きな演出の一つとして山口淑子(李香蘭)の名曲「夜來香」が使われていることがある。とても優しい感じの曲で作品によく合っている。山口淑子は日本人だが、戦前の中国と満州國、そして戦後の香港で李香蘭(リ・シャンラン)として活躍していた。「夜來香」は1944年に中国でヒットした曲だ。
映画自体が世代や文化、言葉の違いなどパーソナルな部分をテーマにしているが、日本人の曲が使われているというのは、日本人にとって映画のテーマにそのまま繋がっていく。これはとても幸運なことのように感じる。
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