ベトナムで日本語教師として働く日本人女性・小松みゆき氏が認知症の母との暮らしをつづった「越後のBaちゃんベトナムへ行く」を、フィクションを交えながら映画化したヒューマンドラマ。
主演は松坂慶子。母役に「Shall We ダンス?」の草村礼子。監督は、娯楽作品から重厚なテーマまで幅広い映画を軽やかにらしく撮りあげる大森一樹。
- 製作:2015年,日本
- 日本公開:2015年10月17日
- 上映時間:114分
- 原案:エッセイ「越後のbaちゃんベトナムへ行く―ラストライフを私と」小松みゆき
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3 映画を見る前に知っておきたいこと
予告
あらすじ
ベトナム・ハノイで日本語教師として働くみさおのもとに、父の訃報が届いた。久しぶりに帰った故郷、新潟で目の当たりにしたのは、認知症を患い、父の死すら理解していない母シズエの姿。
後妻として家に入った母の血縁者は自分ひとり。みさおは、母を施設に預けようと言う義兄の反対を押し切り、母をベトナムに連れて行くことを決意する。
日本どころか新潟から出たこともない母と久しぶりの二人暮らし。母が巻き起こすハプニングも、ベトナムの人々は家族のように二人を受け入れ、言葉が通じずとも心を通わせていく。慣れないベトナム暮らしの中で、徐々に笑顔を取り戻していくシズエ。そして、みさおは高校時代の旧友・小泉と再会し、淡いロマンスの気配に心を躍らせる。
老いた母と向き合い、支えてくれるベトナムの人々との心あたたまる交流を通して、みさおとシズエはベトナムでの第二の人生をより優しく、豊かなものにしていく。
しかし、思いがけない母のケガと激化する介護にみさおは徐々に疲弊していくのだった――。
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映画を見る前に知っておきたいこと
ベトナムという国
ベトナムが舞台ということで、今回は現在のベトナムがどんな国なのかを、実際に生活する人の視点で少し紹介したい。
ベトナムと言えば、思い起こされるのはベトナム戦争だろうか。それも1970年の出来事で、もはや過去の歴史上の出来事になりつつある。今、ベトナムは中国経済と並んで、アジアでも群を抜く高成長と安定性を示すアジアの一国である。
車やバイクが所狭しと行きかう大通りでは、人々は声を掛け合って支えあい、裏路地では将棋を打つ老人が笑い、カフェのオーナーの母娘はにこやかに客を迎え入れる。今のベトナムでは、かつての高度経済成長期の日本を思わせる活気であふれている。
公式サイトより
それでは、ベトナムの特徴をテーマ毎に一つずつ見ていこう。
場所と気候
日本からは飛行機で約5時間と、容易にアクセス出来る。時差も2時間程度で、国際電話をかけるのにも気を遣う必要がない。 「海外に出る」と気負うほどの距離感はない。気候は熱帯、常夏で一年中温暖で過ごし易く、冬の寒さを逃れて避寒に来る人も多い。
宗教
ベトナムは多民族国家であり、仏教をはじめ、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教などの宗教や、さまざまな民間信仰が息づいているが、宗教的な対立や民族の対立によるテロの危険性もほぼない。
8割が日本と同じ大乗仏教であり、祖先を敬い家族を大事にする儒教的な教えも深く根付いている。日本人にとっては親しみやすい生活環境と言える。
治安
治安も良い。凶悪犯罪はほとんどなく、世界的に見ればかなり安全な国だ。ただ、スリやひったくり、詐欺などの小さな事件が山ほどある。貴重品をぶら下げないのはもはや海外旅行の常識。貴重品だけでなく、iphoneやスマホも引ったくりの対象になりやすい。
「知らない人についていかない」「夜間の一人の外出は気をつける」など、日本でも当たり前のことに気をつけていれば、そうそう犯罪に巻き込まれることもない。
物価
物価はとにかく安く、日本とは衣食住にかかる値段が全く違う。安いだけでなく近年の経済成長によって、その質も十分。
服は既製品ではなくオーダーメードが定着していて、自分に合った服を低価格で作ることができる他、家事労働を頼めるお手伝いさんを雇うことも一般的になっている。
食生活
主食は米で、ベトナム料理は日本の料理の食材と同じものを使うため、日本人の味覚には良く合う。味付けのバラエティーも豊富なので、食事が口に合わずに困ることはないだろう。
また、日本と同様にフランス、イタリア、韓国、中国、タイ、インド、日本などなど、各国の料理店がひしめき合う都市もあり、色々な国の様々な料理を楽しめる。スーパーや専門店では各国の食材が手軽に購入できるため、自分で料理する場合にも困らない。
幅の広さという意味では、食生活は日本よりも豊かになるかもしれない。
ベトナムの人々
ベトナムに生活する人は小柄で笑顔の親切な人が多い。外国の人には自分から興味を持っていろいろ教えてくれる上に、困ったときは助けてくれる。美人が多いとも言われている。裏を返せば、若干の馴れ馴れしさは感じるかもしれない。
医療・福祉
認知症の母を連れてくるという本作において、この辺りは重要なポイント。ベトナムでは日本人医師が在籍している医療機関も多く、もしいなくても日本人スタッフが診察時には助けてくれる。
近年では日系医院やフランス系の総合病院などもあり、専門治療も受けられるようになってきている。ただ、保険に加入していないと医療費は物凄く高い。
大人の青春映画
青春映画というと、10代や20代の若い世代の物語を想起させる。テーマは違えど、どれも対象が見えなくなるほどの眩い輝きであり、儚げな火花のようにも思える。比べて、大人の青春映画は、どれも濃密で優しく穏やかな色彩に満ちている。
歳をとる程しがらみは増えるものだが、あるいはその“しがらみ”がその人の人生の色彩をより豊かにしていくのだろうか。歳をとるということは、普通は憚られるものだが、それでも世界は常に新しい。『列車に乗った男』という映画の「歳はとるほど、人生は輝くものだ」という台詞を思い出す。