自分以外はみんな聴覚障害を持っている家族の中で生まれ育った少女が、“歌手になりたい”という夢と大好きな家族の間で心を揺らすヒューマンドラマ。フランス映画祭2015で観客賞を受賞し、動員数750万人を記録した感動作だ。
主演はフランスの歌オーディション番組で抜擢され、歌手として活躍しているルアンヌ・エメラ。『しあわせの雨傘』のカリン・ビアール、『タンゴ・リブレ 君を想う』のフランソワ・ダミアン、『ゲンスブールと女たち』のエリック・エルモスニーノが共演。監督・脚本は『ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者』のエリック・ラルティゴが手がけた。
- 製作:2014年,フランス
- 日本公開:2015年10月31日
- 上映時間:105分
- 原題:『La famille Belier』
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 本国フランスで大ヒット
- 3.2 主演、ルアンヌ・エメラ
- 3.3 シンプルに気持ちを伝えるということ
予告
あらすじ
フランスの田舎町。酪農を営むベリエ家は、高校生のポーラ以外、父も母も弟も全員耳が聴こえない。 美しく陽気な母、熱血漢な父とおませな弟。一家の合い言葉は、“家族はひとつ”。オープンで明るく、仲のいい家族だ。ある日、ポーラの歌声を聴いた音楽教師はその才能を見出し、パリの音楽学校のオーディションを受けることを勧める。夢に胸をふくらませるポーラだったが、彼女の歌声を聴くことができない家族は、彼女の才能を信じることもできず、もちろん大反対。
「夢に向って羽ばたいてみたい、だけど私がいなくなったら・・・」ポーラは悩みに悩みぬいた末に、夢を諦める決意をするが・・・
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映画を見る前に知っておきたいこと
本国フランスで大ヒット
4週連続No1、12週連続Top10入り、750万人超えの脅威の大ヒット!これがどれくらい凄いことかと言うと、映画史始まって以来のランキングでフランス国内動員数100位以内に入るほど。
設定の面白さもさることながら、笑いあり、感動ありでとっつき易く、深みのある内容が人気を呼んでいるようだ。
ちなみに1位は『タイタニック』で2177万人。2位は『bienvenue chez les ch’tis』という映画で2048万人。フランス国内では絶大な人気を誇った作品だが、なぜか日本未公開。
主演、ルアンヌ・エメラ
本作で主演のポーラに抜擢されたルアンヌ・エメラは、フランスの歌オーディション番組「The Voice」で“奇跡の歌声”と賞賛され、歌手として活躍している。その圧倒的な歌唱力のみならず、瑞々しい演技でフランスではかなり権威のあるセザール賞とリュミエール賞の新人賞をW受賞という快挙を成し遂げた。
この映画の持つさわやかな空気感とエモーショナルな感動はルアンヌ・エメラの仕事が大部分を占めているといっても過言ではない。
スクリーンテストは最低、本来ならば落ちていてもおかしくなかったルアンヌを起用したのは、本作におけるエリック・ラルティゴ監督の最大のファインプレーだったのではないだろうか。
役者の演技の実力が作品に及ぼす影響力を、否が応でも感じてしまう作品である。
せっかくなので、しっとりと歌い上げるバラードで彼女の歌声を聴いてみよう。
ルアンヌ・エメラ「Maman」
2013年「The Voice」:ルアンヌ・エメラ
シンプルに気持ちを伝えるということ
余談だが、エリック監督は、試写会のトークショーで手話が持つ可能性について言及している。ショーでは、ルアンヌが観客と手話によってコミュニケーションをとる場面があり、それを見たエリック監督のコメントを紹介したい。
「聴覚障害の方のコミュニティーは本当に素晴らしい。フランスで聴覚障害を持っている方々も、日本で上映しても、国による若干の手話の違いがあってもある程度の理解はできると言っていました。例えば、(フランスの)健常者が日本の言葉を覚えるには最低でも15年はかかるが、手話は短期間で覚えることができ、外国に行ってもコミュニケーションが取れるというのは、本当に素晴らしいと思う」
言語によらない表現方法だからこそ伝わることもある。そう考えると、少々大げさかもしれないが、言葉というのは便利なだけで無粋な気すらしてしまう。
気持ちを伝えようとする。その気持ちが伝わったとお互いに確認しあう。そんなシンプルなコミュニケーションに感動出来ることが、この映画の最大の魅力だ。