2011年に同性婚が法律で認められるようになったニューヨーク。39年間連れ添ってきた画家のベンと音楽教師のジョージは、これを機に入籍することに。
周囲の祝福とともに新しい生活がスタートするはずだった二人だが、同性婚が原因でジョージは仕事をクビになり、差別と偏見に苦しめられる。保険、年金、不動産、老後の不安、孤独、ストレス、様々な問題が二人の門出に立ちふさがる。
それでもベンとジョージはありのままの自分たちを受け入れてくれる人がいる幸福に気付いていく。ニューヨークを舞台に繰り広げられる大人の喜悲劇。
監督・脚本は『あぁ、結婚生活』(2007)のアイラ・サックス。世界の映画評が集まるサイト、ロッテン・トマトで94%が”fresh”の高評価を獲得。中でも主演の『愛と追憶の日々』のジョン・リスゴーと『スパイダーマン2』のアルフレッド・モリーナの演技は好評であった。そんな多くの人の心に響いたギフトのような温かい映画が日本公開となる。
第64回ベルリン国際映画祭正式出品作品。第30回サンダンス映画祭正式出品作品。
- 製作:2014年,アメリカ
- 日本公開:2016年3月12日
- 上映時間:95分
- 原題:『Love Is Strange』
Contents
予告
あらすじ
ニューヨーク、マンハッタン。39年間連れ添ってきた画家のベン(ジョン・リスゴー)と音楽教師のジョージ(アルフレッド・モリナ)は、2011年に同性婚が合法となったことをきっかけに入籍する。二人は親せきや友人たちに祝福されながら結婚式を挙げた。ところが数日後、ジョージは同性婚を理由に勤務先の学校をクビになってしまう。収入が減り住まいを売ることになり、ジョージとベンはそれぞれ別の家に居候を始めることになり、新婚早々別居状態に。同性愛に対する差別と偏見が二人を苦しめる……
心が押しつぶされそうになりながら二人は、ありのままの自分たちを受け入れてくれる人がいる幸福に、そして互いの大切さに改めて気付いていく……
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映画を見る前に知っておきたいこと
同性愛ではなく普遍的な愛こそテーマの映画
監督であるアイラ・サックスは自身がゲイであることを公表している。長編デビュー作となった『ミシシッピの夜』(1996)でもアメリカ南部を舞台にそこに暮らす白人の少年と黒人の少年の同性愛を描いた。この作品は第7回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映された。
こうしたテーマの作品を手掛ける監督は自身もゲイであることは多いが、本作で画家のベンが描く絵画はアイラ・サックス監督の実際のパートナーであるボリス・トレスが描いたものであり、自伝的な要素が強いと思われる。よって十分なリアリティと説得力が存在する。
日本でも2015年に東京都渋谷区と世田谷区で「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行するという条例が可決された。そして、三重県伊賀市や沖縄県那覇市でも同様の試みがされようとしている。日本でも今、同性愛に対しての認識が大きく変わろうとしている。
ひょっとすると、そうした動きの一環としてこのタイミングで本作が日本で公開されることとなったのかもしれないが、この映画の持つ魅力というのは同性愛にとって大きな追い風となるかもしれない。
本作では主人公のベンとジョージの関係だけでなく、40代後半の夫婦ケイトとエリオットや、その息子ジョーイを通して幅広い世代の愛というものが描かれている。愛について経験する出来事や、愛に期待するものはそれぞれ違うが、年齢や性別を超えて普遍的な愛というものが映し出された時、本作はただ同性愛をテーマとしただけの作品ではなくなる。
それが本作が映画レビューサイト、ロッテン・トマトで多くの人から好評だった理由ではないだろうか。この映画を見た人は、自分が同性愛に対して差別や偏見を抱く側の人間であることを嫌うはずである。確かに同性愛がどうしても理解できないという人はいると思うが、愛が理解できない人はそう多くはないだろう。
主人ベンの急死後、甥の息子のジョーイがベンのパートナーのジョージへベンの遺作の油絵を届けた後、ジョーイのガールフレンドとマンハッタンヘンジの夕陽の中を二人並んでスケボーに乗りショパンのピアノ楽曲で終わるエンドロールがとても穏やかで私のお気に入りです。