日本を代表するロックバンドbloodthirsty butchers(ブラッドサースティ・ブッチャーズ)のリーダー・吉村秀樹からの熱烈なラブコールを受け、こちらも日本を代表する映画監督の一人である石井岳龍監督の手によって完成された叛逆の青春ムービー。
もともとブッチャーズのアルバムリリースに合わせてコラボレーション企画として制作されるはずであったが、吉村秀樹が急逝、一度は制作が見送られた。しかし、石井岳龍監督はその遺志を受け継ぎ、まったく新たな一つの物語として『ソレダケ/that’s it』を完成させた。全編にブッチャーズの楽曲が使われ、その魂を大いに感じさせてくれる。
- 製作:2015年,日本
- 日本公開:2015年5月27日
- 上映時間:110分
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 bloodthirsty butchers
- 3.2 吉村秀樹の死
予告
あらすじ
戸籍を奪われ、アンダーグランド暮らしの大黒砂真男は、どん底から抜け出そうともがいていた。ある時、大黒は裏社会の調達屋・恵比寿大吉のコインロッカーを破壊し金の入った財布を奪うのだった。そこで予期せぬハードディスクを発見してしまう。その中には、家出人、ホームレス、破産者、風俗嬢たち、アンダーグランドな人々のビジネス売買用個人情報がぎっしり詰まっていた。恵比寿の追跡を受けて敢え無く監禁されてしまった大黒は、そこで拘束されていた風俗嬢の南無阿弥と出会う。二人はなんとか脱出し、都会の片隅に身を寄せダークサイドに生きる知人・猪神楽彦に助けを請うも、闇の追っ手が2人に捕まり、またしても監禁されてしまう。
謎の極悪ギャングのボス・千手完による拷問の中で大黒の過去にまつわる宿命の謎が明かされる。もがき苦しんでも決して抜け出すことができなかった負のループが導いた先で大黒は、彼を束縛する宿命との対決を決意する・・・
映画を見る前に知っておきたいこと
bloodthirsty butchers
bloodthirsty butchers(ブラッドサースティ・ブッチャーズ)は間違いなく日本を代表するバンドの一つである。『ソレダケ/that’s it』はファンにとっては大変楽しみな作品だろう。バンドを知らずに観る人は映画の中でその曲を耳にすることになるが、ブッチャーズがどんなバンドか知っておいて欲しい。
その圧倒的な轟音による凄まじい音圧とケタ外れな独創性は他に類をみない音像はパンクの枠には収まらない。Fugazi、Rocket From The Crypt、Beck、The Flaming Lips、Rage Against the Machine、J・マスシス(Dinosaur Jr.)など大物海外アーティストと共演し、彼らからの評価も高い。また2003年にNUMBER GIRLの田渕ひさ子がギターとしてバンドに加わっている。彼女は、ギター・マガジン誌による「史上最も偉大なギタリスト100人」に選出されるなど、日本を代表するギタリストである。彼女が加わったことによりそのサウンドはさらに重厚感を増していった。
また彼女はブッチャーズのリーダー・吉村秀樹の妻でもあるのだが・・・2013年、吉村秀樹は急性心不全で亡くなっている。
吉村秀樹の死
『ソレダケ/that’s it』は吉村秀樹が急逝したため一度は制作を見送られたが、彼と親交の深い石井岳龍監督によって、当初とは違う形で完成された。その魂が受け継がれた作品となっている。
映画の話とは離れてしまうが、eastern youthの最新アルバム「ボトムオブザワールド」のテレビ塔という曲でも吉村秀樹のことが歌われている。eastern youthもブッチャーズと同じ札幌で生まれたバンドで、その繋がりを知って聴くととても切なくなる。
2015年4月に行われたeastern youthの広島のライブで、この曲を演奏する前にボーカルの吉野寿がこう語っていた。
「若い頃、札幌にあるテレビ塔がたまり場で、誰も金を持ってないが酒だけはあった。金がないのにどうやって酒を手に入れたかは言えないが。酔っぱらってテレビ塔の下で殴り合っては血まみれになっていた。」
吉村秀樹と吉野寿のやんちゃな時代が創造できるようなMCだった。僕はこの話がすごく印象に残っている。