暗闇にひときわ輝く、
希望の光 ──
2016年アカデミー賞で6部門(作品賞/監督賞/助演男優賞/助演女優賞/脚本賞/編集賞)にノミネートされ、見事作品賞と脚本賞のW受賞を果たした“ジャーナリスト映画”の金字塔になり得る可能性を秘めた要注目作品。
2002年1月、ボストン・グローブの紙面に全米を震撼させるスキャンダルが掲載された。それは地元ボストンのカトリック教会で行われている数十人もの神父による児童への性的虐待だった。カトリック教会という巨大権力がその事実を隠蔽しようとする中、ボストン・グローブ紙のチーム“スポットライト”はジャーナリズムの正義を貫く。教会の闇を白日にさらした記者たちの闘いを描いた衝撃の実話。
映画の基となったこの調査報道は、2003年に栄えあるピューリッツァー賞(公益部門)を受賞している。
監督・脚本を手掛けたトム・マッカーシーはアカデミー監督賞受賞とはならなかったものの、脚本家としての評価をいっそう高めることとなった。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 反カトリック的な映画ではない
予告
あらすじ
2001年の夏、ボストン・グローブ紙の新しい編集局長にマーティ・バロン(リーブ・シュレイバー)が着任した。マイアミからやってきたアウトサイダーのバロンは、地元出身の誰もがタブー視してきたカトリック教会に報道のメスを入れる。教会の権威にひるまず、ある神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げる方針を打ち出すのだった。
その担当を命じられたのは、独自の極秘調査に基づく特集記事欄“スポットライト”を手掛ける4人の記者たち。デスクのウォルター”ロビー”ロビンソン(マイケル・キートン)をリーダーとするチーム“スポットライト”は、事件の被害者や弁護士らへの地道な取材を積み重ねていく。

© 2015 SPOTLIGHT FILM, LLC
やがて大勢の神父が同様の罪を犯しているおぞましい実態と、その背後に教会の隠蔽システムが存在する疑惑に辿り着く。しかし、ボストン・グローブ紙の定期購読者の53%がカトリック信者であることや、教会の強硬な反撃が彼らの報道の前に立ちはだかる。

© 2015 SPOTLIGHT FILM, LLC
9.11同時多発テロ発生による一時中断を余儀なくされながらも、チーム“スポットライト”は報道の正義のため、そして今も犠牲になっている子供たちのため、一丸となって教会の罪を暴くために闘い続けるのだった……
Sponsored Link映画を見る前に知っておきたいこと
ここまで社会派の作品が今年のアカデミー作品賞を受賞したことは少し意外な結果だった。ましてや本作はカトリック信者にとっては痛みを伴うような内容でもある。しかし、こうした評価はアメリカに重要な意味をもたらしたのではないだろうか。
反カトリック的な映画ではない
アカデミー賞では、作品賞に輝いた映画がそのまま脚本賞も受賞するというのはよくあることだが、本作においては脚本の力が一際大きかったように感じる。
というのも、本作が高く評価された背景には“反カトリック的な映画ではない”という事実が重要だったからだ。
カトリック教会の中心でもあるバチカンの委員会でもこの映画は上映され、米カトリック教会に「罪を完全に受け入れ、それを公に認め、すべての責任を取る」ことを促した作品とされた。これはカトリック教会がアメリカ社会のジャーナリズムと正義を共有したことを意味している。
扱うテーマとしては一歩間違えれば反カトリック的な映画として捉えられてもおかしくないが、そうならなかったのはひとえに脚本の妙技と言えよう。実際、本作が受賞した数々の映画賞の中でも、脚本賞が目立っている。
今年のアカデミー作品賞に輝いたことでもこの映画が脚光を浴びるのは間違いないが、社会的な影響や映画の役割を考えると“今年最も重要な1本”と言える。
しかし少し寂しいのは、僕たち日本人には馴染みの薄いテーマだということだ。世界的にはカトリック信者は12億人いるとされているが、日本では41万人程度であることからも、それはうかがえる。
それでも“ジャーナリスト映画”として金字塔になり得るレベルの作品であり、完全に実話ベースの物語からは、アメリカ社会でのジャーナリズムの在り方や、教会が持つ権威、信仰などを知ることができる。
宗教的なテーマが縁遠い日本人だからこそ、カトリック信者にとって“反カトリック的な映画ではない”ことが重要な意味を持った映画であることだけは知っておいて欲しい。
作品データ
原題 | 『Spotligh』 |
---|---|
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2015年 |
公開日 | 2016年4月15日 |
上映時間 | 128分 |
キャスト
キャスト | マーク・ラファロ |
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マイケル・キートン | |
レイチェル・マクアダムス | |
リーブ・シュレイバー | |
ジョン・スラッテリー | |
ブライアン・ダーシー・ジェームズ | |
スタンリー・トゥッチ | |
ビリー・クラダップ | |
ジェイミー・シェリダン |
監督・スタッフ
監督 | トム・マッカーシー |
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脚本 | ジョシュ・シンガー |
トム・マッカーシー | |
製作 | マイケル・シュガー |
スティーブ・ゴリン | |
ニコール・ロックリン | |
ブライ・パゴン・ファウスト | |
製作総指揮 | ジェフ・スコール |
ジョナサン・キング | |
ピエール・オミダイア他 |
これを機に大衆に悪魔崇拝の存在を認知して欲しい
なるほど。。
「反カトリック的ではない」ことが重要なポイントとなることが、よくわかりました。
単純に「だから教会などの権力機構はアカン」という論調になってしまっては、当然「そんなことはない」という反論を招いて、単なる二項対立に成り下がってしまい、この作品の重大なメッセージが台無しになってしまいますよね。
コメントありがとうございます。
言いたかったことが伝えられて嬉しいです。
反カトリック的で単なる二項対立の作品になっていれば、オスカーどころか酷評されていたのではないかとすら思います。