正しく生きるとはどういうことなのか?社会に問われる、どこまでも霧散したこの問いの解を追った。美術家の「柳田」という男を中心に、様々な人生を生きる人の「正しさ」を描いた問題作。
- 製作:2013年,日本
- 日本公開:2015年3月7日
- 上映時間:108分
Contents
予告
あらすじ
物語の主人公は「柳田」(岸部一徳)という男。美術大学でも教える、高名な芸術家だった。大きな災害を起こした原発事故にインスピレーションを受け、自身の最後の作品として”放射性物質をつかったオブジェ”を作り始める。そして彼の体には同時に、死の影も忍び寄っていた。教え子の桜(水本佳奈子)の製作したオブジェを粉々に壊した事がきっかけで、執拗に桜に追われ始める。
震災で大きな被害を受け、それを利用して家と夫を捨てた母とその母からDVを受ける娘。同じく震災で行方不明になった姉を探すために少年院を脱走した少年。流産した妻に衝動的に刃物を突きつける夫。漠然とした不安に圧迫される現在を生きる人々の人生が柳田の物語を取り巻いていく。
映画を見る前に知っておきたいこと
芸術作品としての映画
予告動画を見ても、あらすじを読んでも、なんとも分かりづらい映画です。タイトル通り、『正しく生きる』という漠然とした問いをテーマに据えているので、当たり前といえば当たり前なんですが・・・。漠然とした問いには、漠然とした答えしか返ってこないものです。とは言え、生きていれば誰もが一度は考える問い。おそらくしっかりとした答えを得た人はいないでしょう。考えて、ふっと沸いた言葉に満足するしないにかかわらず、その問いはすぐに置かれます。なぜならば、正しさと相対することは万人にとって辛い事ですから。
この映画はそんな辛いテーマに正面から挑み、見る人に痛烈な問いを投げつけます。公式サイトによれば、製作の現場ではDV、貧困、社会的弱者の立場、あらゆる社会問題を直視し、その有り様に耐え切れず涙することもあったといいます。誰もが脇に置く『正しさとは何か?』という問いを考え続けて一つの作品を作り上げるまでの過程は、決して楽しいものではなかったでしょう。「自分の中にある何かわからないもの」を形にして表現することは、芸術のプロセスです。故にこの映画はエンターテイメントではなく、どこまでも芸術を観る視点でみるべきです。そういう視点で見に行けば、きっと良い刺激になるでしょう。
監督・キャスト
この映画は「北白川派」という運動によって作られた映画の第5弾作品です。「北白川派」とは京都造形芸術大学映画学科の講師、学生とプロが共同で毎年一本の映画を完成させ劇場公開するプロジェクトです。
監督:福岡芳穂(ふくおか よしほ)
京都造形芸術大学教授。起用された俳優も俳優も同大学の生徒、OBが多い。彼はこの映画の主人公である「柳田」という人物を自分の父だと言っている。彼の父は画家だった。公式サイトの監督の言葉に詳しい内容が書かれているので、この映画を見に行こうと思う人はぜひ読んでほしい。
岸部 一徳(きしべ いっとく):【柳田 周/芸術家・芸術大学教授】
日本を代表する名優で元バンドマン。1970年代活動したPYGというバンドでベースを担当。レッドツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが岸辺のプレイに感動し、しきりに会いたがっていたという逸話は有名。
柄本 明(えもと あきら) 【白石 健彦/柳田の友人】
俳優であり、コメディアン。「志村けんのだいじょうぶだぁ」や「志村けんのバカ殿様」での志村けんとのコントが印象深い。本人は「コントは志村さんとしかやらない。」と公言している。
水上 竜士(みずかみ りゅうし) 【金子 勲/暴力組織幹部】
宮﨑 将(みやざき まさる) 【久保田 滾/朝雄の先輩】
宮崎あおいのお兄ちゃん。『EUREKA(ユリイカ)』『理由』『初恋』で兄弟役として共演している。
鈴木 卓爾(すずき たくじ) 【各務 泰志/いつかの夫】
宇野 祥平(うの しょうへい) 【佐々木 浩介/弁当屋の店長】
大森 立嗣(おおもり たつし) 【小児科の医者】
京都造形芸術大学生徒/OB
水本 佳奈子(みずもと かなこ)【村上 桜】
青山理紗(あおやま りさ)【各務 いつか】
宮里紀一郎(みやざと きいちろう)【内田 圭】
浜島正法(はまじま まさのり)【佐伯 朝雄】
上川周作(かみかわ しゅうさく)【森 優樹】
杉本瑞季(すぎもと みずき)【阿部 未夢】