愛は思わぬところで、
あなたを待っている。
『エレファント』(03)の名匠ガス・ヴァン・サントが仕掛ける、瑞々しく美しい映像の中にリアリティとファンタジーが同居する異色のミステリー。日本の青木ヶ原樹海を舞台に二人の男の邂逅を通じて、スピリチュアルかつ詩的に独自の死生観を映し出す。
『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)でアカデミー主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒー。『ラスト サムライ』(03)でアカデミー賞候補となって以来、日本を代表する国際派として活躍する渡辺 謙。驚くべき共演によって映画の核心部が支えられる。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 賛否両論の正体
- 4 あとがき
予告
あらすじ
アメリカ人のアーサー(マシュー・マコノヒー)は、富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海に入っていった。彼はここで人生を終わらせようというのだ。

© 2015 Grand Experiment, LLC.
絶望の淵に樹海を彷徨うアーサーは、怪我をし寒さに震える日本人タクミ(渡辺 謙)と出会う。妻子のもとへ帰ろうとする彼を放っておけないアーサーは、共に出口を探して歩き回る。やがて二人は方向感覚を失い、森を抜け出すことができなくなっていた。森は彼らを嘲笑うかのように風に葉を鳴らす。

© 2015 Grand Experiment, LLC.
過酷な状況が体力の限界が近づきつつある二人の心を開かせていく。その夜、タクミと共に焚き火を囲んだアーサーは、樹海への旅を決意させたある出来事を語り始める ──
Sponsored Link映画を見る前に知っておきたいこと
自身もゲイだと公表しているガス・ヴァン・サントは、『マイ・プライベート・アイダホ』(91)や『ミルク』(00)など自ら同性愛というテーマに向かっていくことも多く、米インディペンデント界を代表する監督として挑戦的かつマイノリティな作品を撮り続けている。
そんな中、最高の評価を得たのが2003年の『エレファント』だろう。コロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件を題材に、数人の高校生たちそれぞれの視点から見た軌跡として何度も同じ時間を辿ることで映画は次第に密度を増していく。そんな彼の新境地ともいえる手法で、同年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞を史上初めて同時受賞してみせた。
しかし、そのテーマを見極めるのも一苦労するような作風には常に賛否両論もつきまとう。どうやら『追憶の森』も例外ではないようだ。
賛否両論の正体
2015年のカンヌ国際映画祭で封切られた本作は、盛大なブーイングでもって迎えられた。それは、かつてあれ程までにガス・ヴァン・サントを受け入れた同映画祭が彼の作品を拒絶した瞬間だった。
その後、本作はアメリカでも多くの酷評に晒されることとなるのだが、どうやら海の向こうでは“自殺をするために日本に行く”という行動そのものが不可解に映るようだ。そのため批評家たちは、「ガス・ヴァン・サントのワースト・ムービー」「ストーリーが陳腐で馬鹿げている」などと書き立てている。
しかし、青木ヶ原樹海にまず自殺を連想する日本人からすれば、そこに広がる手付かずの自然の息を呑むような荘厳さに、ガス・ヴァン・サントが死生観を見出したことも違和感なく受け入れることができるのだ。その証拠に、本作の日本における評価は海外の悪評を覆すものとなっている。
必ずしもカンヌでの受賞歴がその映画のおもしろさを測る物差しではないように、カンヌでブーイングを浴びたからつまらないとは限らない。僕たちが素晴らしい映画に出会いたいように、映画もまた観客を必要とするのだろう。
評価が気にならないと言えば嘘になるが、本作に関しては名匠の深遠なテーマを共有できる日本人であることに特別感すら感じる。
あとがき
本作が日本人に受け入れられる裏には渡辺 謙の存在がある。彼の助言が監督の日本についての知識を補いながら、より自然な形へと映画を導いたようだ。そして彼の演技は、マシュー・マコノヒーとナオミ・ワッツと並んでもなんら見劣りしない。
ほぼこの3人の演技によって紡がれていく物語は、日本人にとってはむしろ、かつてのガス・ヴァン・サント作品よりも感情移入できるはずだ。
作品データ
原題 | 『The Sea of Trees』 |
---|---|
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2015年 |
公開日 | 2016年4月29日 |
上映時間 | 110分 |
原作 | 小説『追憶の森』 クリス・スパーリング |
キャスト
キャスト | マシュー・マコノヒー |
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渡辺 謙 | |
ナオミ・ワッツ | |
ケイティ・アセルトン | |
ジョーダン・ガヴァリス | |
ジェームズ・サイトウ | |
オーウェン・バーク | |
玄理 |
監督・スタッフ
監督 | ガス・ヴァン・サント |
---|---|
脚本 | クリス・スパーリング |
製作 | クリス・スパーリング |
ケン・カオ | |
ギル・ネッター | |
ケビン・ハローラン | |
F・ゲイリー・グレイ | |
E・ブライアン・ドビンス | |
アレン・フィッシャー |
私はこの映画に深く感銘した。主人公が「妻を世界一愛していた。僕が悪かったんだ、僕が」と号泣するシーン。今思い出しても涙を禁じえない。
今日見てきました。良かったです。
ああーそうかあ!って感動しました。
突っ込みどころはあるのでしょうが、おそらくそこは伝えたい事じゃないので、カンヌの評判は無視してフラりと見に行くことをオススメします。
心が温かくなりましたよ。
渡辺謙の演技が素晴らしかったです 顔を見てるだけで思いが伝わってきました 登場人物も少なく一見単調なようですがのめり込んで見いってしまいました 日本人だからこそ共感できる映画だと思います
感想ありがとうございます。カンヌ国際映画祭でのブーイングとは逆の意見が多く、必ずしも海外での評価と映画のおもしろさは一致しないのだと改めて実感します。きっと国によっても捉え方が違うのでしょうね。
レンタルで見ました。映画は創作の世界です。理屈など並べるよりも如何に感動を与えたかではないでしょうか。
3人の演技は卓越してました。夫婦間のいさかいの描写が内面的に深く、とても感動しました。特に、折角心を通い合わせた途端、事故死してしまい号泣する場面、最後に渡辺謙を介し、問いかけた答え(キイロ、フユ)を伝える場面は我が身とかぶり涙が止まりませんでした。こんな映画にまた巡り合いたいですね。
カンヌ国際映画祭のブーイング?今迄沢山の映画を観てきました。この感性豊かな作品に出会えた事に感謝します。キイロ フユ 泣けます。