映画を観る前に知っておきたいこと

【きみといた2日間】ネットから始まる現代の恋

投稿日:2015年11月28日 更新日:

きみといた2日間

本年度アカデミー賞を3部門受賞した『セッション』で主演を務めたマイルズ・テラーが主人公・アレックを演じ、今時の恋愛を描いたラブストーリー。アメリカではカップルの1/3がネットで知り合っていると言われる現代の恋愛事情をリアルに映し出す。

すべてを失い崖っぷちに立たされたヒロイン・メーガンを演じるのは『ラブ・アゲイン』のアナリー・ティプトン。本作は、アカデミー賞監督であるマイク・ニコルズの息子マックス・ニコルズの長編初監督作品でもある。また本作の脚本は、映画化されていない優れた脚本を選定する2011年のブラックリストに選ばれていた。

  • 製作:2014年,アメリカ
  • 日本公開:2015年12月23日
  • 上映時間:86分
  • 原題:『Two Night Stand』
  • 映倫区分:R15+

予告

あらすじ

ニューヨーカーのメーガン(アナリー・ティプトン)は、医大を卒業したものの就職先は中々見つけられずにいた。そんなある日、婚約までしていた恋人から突然別れを告げられてしまう。さらに追い打ちをかけるように、恋人と二人で暮らしたいルームメイト(ジェシカ・ゾー)から、家賃を払わないなら部屋を出て行ってほしいと言われ、八方塞がりの状態になってしまう。きみといた2日間そんな現状を変えるべく、恋活サイト“ロマンス.com”に登録することを決意したメーガン。そこで知り合った彼アレック(マイルズ・テラー)の部屋で一夜を過ごすことに。きみといた2日間その場限りの関係と割り切ったメーガンは、彼の家から出て行こうとするのだが、ちょうどブリザードが街を襲い、大雪で外に出られなくなってしまう。仕方なく、メーガンはアレックの部屋にもう一晩泊まることになる。きみといた2日間1日目は喧嘩ばかりで全く素直になれなかった二人は、2日目を過ごすことで次第に距離が縮まっていく……

映画を見る前に知っておきたいこと

マイク・ニコルズと息子のマックス・ニコルズ

マイク・ニコルズ監督と言えば1967年の『卒業』が今も名作とされており、この作品でアカデミー賞監督賞を受賞したアメリカン・ニューシネマを代表する監督の一人である。アメリカン・ニューシネマとは、政治の腐敗、黒人差別、ドラッグ問題、無気力な若者など1960年代当時のそうしたアメリカの世相を投影した反体制的な映画のことである。またそのムーブメントを指す。

さらにマイク・ニコルズ監督は、アカデミー賞、トニー賞、グラミー賞、エミー賞の4賞を受賞している。それは歴史上でもまだ9人しかいない快挙である。舞台のトニー賞、音楽のグラミー賞、テレビのエミー賞、それぞれの賞の権威は映画のアカデミー賞と同列とされている。

本作『きみといた2日間』は、そんな偉大な映画監督マイク・ニコルズの息子・マックス・ニコルズが監督したわけだが、初の長編監督ということでその実力はまだまだ未知数である。しかし、これからを期待させる予感はある。それは決してマイク・ニコルズ監督の息子であるというだけの理由ではない。

マイク・ニコルズ監督の息子というフィルターを通してマックス・ニコルズという監督を見てしまうのは避けられないことだと思うが、本作はあえてそのフィルターがあることによってよりおもしろくなるのではないかとも思う。

マイク・ニコルズ監督の代表作『卒業』も本作同様に恋愛映画であった。そしてアメリカン・ニューシネマを代表する作品と言ったが、それは当時のアメリカを投影した作品であった。アメリカン・ニューシネマはニューヨークを中心に巻き起こったムーブメントであったが、本作もニューヨークを舞台に現代のアメリカを投影した作品と言える。ここには親子で共通する作風が伺える。これは別に父親のことを意識してだはなく、たまたま挑んだテーマに共通点があったのだと思う。こうした嗅覚というのはマイク・ニコルズ監督から受け継いだ血によるものと感じるのだが、これがマックス・ニコルズ監督のこれからのキャリアに期待する大器の片鱗を予感した理由である。

無機質な時代に温かみを感じさせてくれる映画

現在カップルの1/3がネットで知り合っていると言われるアメリカだが、日本も同じような状況であると思う。僕の友だちにもネットで知り合って半年以上付き合っているカップルがいるが、実際に会ったのは一度だけという昔ではあまり考えられないような恋愛だ。こうした関係のカップルも今では多くいるのではないかと思う。

一見、無機質にも感じてしまうような人間関係だが、二人の関係が深くなればバーチャル感覚ではいられないので結局は普通の恋愛と大差はない。便利な時代によって生まれた方法の一つに過ぎないのだ。

本作ではネットでの恋活という現代の恋愛の方法をテーマにしながら、実際の人間同士の繋がりの難しさや温かさを教えてくれる。たった2日間のことだが、今の若者の恋愛事情をリアルに描いていると思う。便利になり過ぎる一方でどんどん無機質になっていく人間関係も、本作を見ればそこに血を通わせることができることを再認識させてくれる。

アメリカン・ニューシネマのように反体制的というわけではないが、時代に対して戦う姿勢が感じられる作品だ。

-ラブストーリー, 洋画
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