映画を観る前に知っておきたいこと

未来よ こんにちは
ユペールを見つめるミア・ハンセン=ラヴ

未来よ こんにちは

自分のために花を買う

長編デビュー作『すべてが許される』(07)から“喪失や別離をどう乗り越えるか”というテーマに果敢に挑み続けるフランスの若き女流監督ミア・ハンセン=ラヴ。弱冠35歳にしてヌーヴェルヴァーグの巨匠エリック・ロメールの後継者と称され、これまで『グッバイ・ファーストラブ』(11)『EDEN エデン』(14)などの青春映画を撮ってきた彼女が、50代後半の女性を主人公に描き出す愛に満ちた感動の人間ドラマ。

パリの高校で哲学を教えるナタリーに突然訪れた転機。夫との離婚、母の他界、停滞する仕事。気が付けば、慌ただしさの中にも充実していた日々は過去のものに。孤独も時の流れもしなやかに受け入れた彼女に未来が再び微笑みかける ──

セザール賞に史上最多13度ノミネートされた“フランスの至宝”と謳われる大女優イザベル・ユペールの演技が、ミア監督の作家性を刺激する。


予告

あらすじ

パリの高校で哲学を教えているナタリー(イザベル・ユペール)は、同じ教師である夫ハインツ(アンドレ・マルコン)と独立した二人の子供がいる。彼女は市内に一人で暮らす母(エディット・スコブ)の介護に追われ、慌ただしい中にも充実した日々を送っていた。

ナタリーの授業で哲学のおもしろさを知り、教師になった若者ファビアン(ロマン・コリンカ)は彼女の自慢の教え子だった。既に教師を辞め、執筆をしながらアナーキスト仲間と活動を共にする彼と久しぶりの再会を果たすナタリー。

未来よ こんにちは

© 2016 CG Cinema・Arte France Cinema・DetailFilm・Rhone-Alpes Cinema

そんな折、同士ともいうべき存在の夫ハインツが唐突に「好きな人ができた」と告げ家を出ていく。結婚25年目の出来事だった。さらに、母は認知症を悪化させ施設に入ることに。そこに着いてきた、母が溺愛していた猫のパンドラを猫アレルギーのナタリーが飼うという可笑しな現実。

未来よ こんにちは

© 2016 CG Cinema・Arte France Cinema・DetailFilm・Rhone-Alpes Cinema

生徒たちを家に招き、映画に行き、ナタリーが日常を楽しむべく日々を重ねていた矢先に母が亡くなってしまう。そして独りになった彼女に追い討ちをかけるように、長い付き合いの出版社は売上第一主義に舵を切り、著作の契約も終了した。

猫のパンドラを連れて、ファビアンが仲間と暮らすフレンチ・アルプス近くのヴェルコール山へと向ったナタリーだったが、またしても新たな別れが待っていた……


映画を観る前に知っておきたいこと

監督のミア・ハンセン=ラブは映画作家となる以前に、ヌーヴェルヴァーグを生み出すきっかけとなった映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」で批評活動をしていたこともあり、かつての巨匠たちが辿った道程を行くそのキャリアにエリック・ロメールの姿が重ねられる。若干26歳で挑んだ長編デビュー作『すべてが許される』で、その年の優れたフランス映画に贈られるルイ・デリュック賞を獲得したことが彼女の評価の始まりだった。

瑞々しい感性という言葉でしばしば表現されるミア監督作品だが、『未来よ こんにちは』は2016年ベルリン国際映画祭の銀熊(監督)賞を経て、彼女を名実共にフランスを代表する女性監督に押し上げた作品となった。

ユペールを見つめる

これまですべての長編作品で監督と脚本を手がけてきたミア・ハンセン=ラヴ。本作では、フランスを代表する女優イザベル・ユペールを想定して脚本を執筆したという。

70年代から活躍するユペールは2017年のゴールデングローブ賞でも主演女優賞に輝くなど、今なお“フランスの至宝”が色褪せることはない。そんな彼女に対する敬愛の念がミア監督の作家性までを引き出していく。

ミア監督が長年描き続けた“喪失や別離をどう乗り越えるか”というテーマの中で映し出される、孤独や時の流れをしなやかに受け入れていくヒロインの凜とした姿は、彼女のこれまでの瑞々しい感性とは一線を画す。

ミア・ハンセン=ラヴはこの映画で、残酷な現実に対峙するための未来を見つめる力強さを手に入れた。

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