近年、邦画で多く見受けられるようになった漫画原作の映画化。この潮流は洋画においても同様に起こっている。2000年代以降アメリカの漫画、いわゆるアメコミを原作とした映画作品は雨後のタケノコの如く数を増やし続けているのだ。
もともと「スパイダーマン」「バットマン」「スーパーマン」など、アメコミは古くから映画化されていたが、2000年に公開された『X-メン』の大ヒットは状況を加速させた。その勢いは今なお衰えず、なんとこの先2020年までにアメコミの映画化は30本超が予定されている。
更にヒーローやヴィラン(悪役)が映画の枠を越えて共演するクロスオーバー作品も増え続けている。それらは僕らをワクワクさせてくれるのだが、あるひとつの弊害を生んでしまった。
「どの作品から見れば良いのだろう?」
その盛り上がりや話題性とは裏腹に、何から手を付けたら良いのか分からなくなっている人も多いはずだ。
そこで、これからアメコミ映画の話題作をできるだけ楽しめるように、どの作品から手を付けるのがベターか解説してみたい。
最後まで読み進んでもらえれば、好みのアメコミ映画をチョイスできるようになるはずだ。
Contents
マーベルとDCコミックは別物!
まずは発行元の出版社から見てみよう。アメコミの出版社は大きく分けて2つ、マーベルとDCコミックだ。映画化されるアメコミの殆どが、この2つの会社によって出版されている。
映画では出版社の垣根を越えてクロスオーバー作品が生まれることがないので、マーベルとDCコミックで作品をしっかり分けて考えないといけない。この大前提を抑えるだけでもかなりすっきりできるはずだ。
※コミックでは既にマーベルとDCコミックのクロスオーバーが行われているので、この前提はあくまで映画限定である
マーベルの映画化作品
- 『スパイダーマン』シリーズ
- 『X-MEN』シリーズ
- 『アベンジャーズ』シリーズ
- 『ファンタスティック・フォー』シリーズ
- 『アイアンマン』シリーズ
- 『マイティ・ソー』
DCコミックの映画化作品
- 『スーパーマン』シリーズ
- 『バットマン』シリーズ
- 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』
- 『スーサイド・スクワッド』
- 『ワンダーウーマン』※2017年映画化予定
こうして出版社ごとに区分けすることで、どのヒーローやヴィラン(悪役)のクロスオーバーが可能か見えてくる。
多くのアメコミファンがマーベルとDCコミックのヒーローやヴィランはどっちが強いのか?と盛り上がっているが、それはマーベルとDCコミックのクロスオーバーが難しいからこそなのだ。
マーベルのソー、ハルク、シルバーサーファーといったヒーローたちは100トンの物体を持ち上げるのに対し、DCコミックのスーパーマンは80万トンの物体を持ち上げられる。そもそも設定から大きく違っている。
それでも、ファンはそんな議論にいつまでも夢中になってしまう。アメコミにはファンのロマンがあるからだ。
映画制作会社とクロスオーバー作品の関係
マーベルとDCコミックで映画化作品を分類してみたが、それよりもさらに重要なのが映画制作会社の違いだ。
20世紀FOX、ソニーピクチャーズ、レジェンダリー・ピクチャーズ、マーベルスタジオ、DCエンターテインメントなど多くの映画制作会社がアメコミのキャラクターごとに映画化権を持っており、この垣根を越えるのもまた難しいのだ。
この制約により、同じ出版社のキャラクターでも映画制作会社が違うと共演させることができない。
クロスオーバーの境界線
アメコミ映画の人気が上がるほどに映画化権争いは激しくなる。こうなると状況はややこしくなり、初心者がさらに取っ付きにくくなるという矛盾が起きてしまっているのだ。
そこで別の映画制作会社同士ではクロスオーバーできないというルールを踏まえて、さらに作品を分類してみよう。そうすれば、完全にどのヒーローやヴィラン(悪役)のクロスオーバーが可能かがわかる。
実際は共同製作などもあるため映画化権はもう少し複雑だ。ここではあくまで作品を整理するための分類と捉えてほしい。
マーベル原作映画の制作会社
20世紀FOX
- 『X-MEN』シリーズ※『デッドプール』などのスピンオフ作品を含む
- 『ファンタスティック・フォー』シリーズ
ソニーピクチャーズ
- 『スパイダーマン』シリーズ※サム・ライミ版『スパイダーマン』三部作、『アメイジング・スパイダーマン』2作
マーベル・スタジオ
- 『アベンジャーズ』シリーズ
- 『アイアンマン』シリーズ
- 『マイティ・ソー』シリーズ
- 『キャプテン・アメリカ』シリーズ
DCコミック原作映画の制作会社
レジェンダリー・ピクチャーズ
- 『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』※リブート版ダークナイト三部作
DCエンターテインメント
- 『スーパーマン リターンズ』
- 『マン・オブ・スティール』
- 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』
- 『スーサイド・スクワッド』
- 『ワンダーウーマン』※2017年映画化予定
- 『ジャスティス・リーグ』※2017年映画化予定
これがアメコミ映画におけるクロスオーバーの境界線だ。ただ現時点で実際にクロスオーバー作品を手掛けている会社はマーベル・スタジオとDCエンターテインメントだけである。
マーベル・スタジオのクロスオーバー作品は「マーベル・シネマティック・ユニバース」。DCエンターテインメントのクロスオーバー作品は「DCエクステンデッド・ユニバース」としてそれぞれまとめられている。
よってクロスオーバー作品を見る正しい順番は「マーベル・シネマティック・ユニバース」と「DCエクステンデッド・ユニバース」をそれぞれ公開順に見ていくことだ。
クロスオーバー作品は公開順で!
ここで重要なのが、「マーベル・シネマティック・ユニバース」と「DCエクステンデッド・ユニバース」のそれぞれを一つのシリーズとして捉えることだ。
クロスオーバー作品は、同一タイトルの続編を順番に見てしまうと間が抜けてしまう。
例えば、『アイアンマン』を見た後に『アイアンマン2』を見るのではなく、その間に『インクレディブル・ハルク』を挟まなければいけない。
こうすることによって、アメコミの醍醐味であるクロスオーバーによる世界観の広がりを体感できるのだ。
マーベル・シネマティック・ユニバース
フェイズ 1※フェイズ=シーズン
- 『アイアンマン』(2008)
- 『インクレディブル・ハルク』(2008)
- 『アイアンマン2』(2010)
- 『マイティ・ソー』(2011)
- 『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)
- 『アベンジャーズ』(2012)
フェイズ 2
- 『アイアンマン3』(2013)
- 『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)
- 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)
- 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
- 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)
- 『アントマン』(2015)
フェイズ 3
- 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)
- 『ドクター・ストレンジ』(2016)
- 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 2』(2017)
- 『スパイダーマン/ホームカミング』(2017)
- 『マイティ・ソー/ラグナロク』(2017)
- 『ブラックパンサー』(2018)
- 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 』(2018)
- 『アントマン&ワスプ』(2018)
- 『キャプテン・マーベル』(2019)
- 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー PART2』(2019)
フェイズ 4
- 『インヒューマンズ』(予定)
DCエクステンデッド・ユニバース
- 『マン・オブ・スティール』(2013)
- 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
- 『スーサイド・スクワッド』(2016)
- 『ワンダー・ウーマン』(2017)
- 『ジャスティス・リーグ』(2017)
- 『ザ・フラッシュ』(2018)
- 『アクアマン』(2018)
- 『シャザム』(2019)
- 『ジャスティス・リーグ パート2 』(2019)
- 『サイボーグ』(2020)
- 『グリーンランタン コープス』(2020)
まとめ/アメコミ映画を見る順番
アメコミ映画を見ようと思った時に、まず注意するのがクロスオーバー作品かどうかということ。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」と「DCエクステンデッド・ユニバース」に分類されているクロスオーバー作品であれば、タイトルに関係なくその中で公開順に見ていく。
クロスオーバーしていなければ、その作品のシリーズをそのまま公開順に見ていく。
まとめると、たったこれだけのことなのだ。
ただ、それをわざわざ出版社や映画制作会社で分類し順を追って説明したのは、アメコミ映画がこの先さらに複雑になるからだ。
現在も「マーベル・シネマティック・ユニバース」に対抗して、20世紀FOXが『X-MEN』と『ファンタスティック・フォー』のクロスオーバー作品を計画している。この事例からも伺えるように、この先クロスオーバー作品を制作する会社が増えていくことが予想される。
出版社や映画制作会社の垣根を越えてのクロスオーバーはできない。この基本ルールを抑えておけば、複雑化する状況にも対応できる。
Sponsored Link
最初におすすめのアメコミ映画
この記事を読んでくれた人の多くは、「バットマン」や「スーパーマン」のような日本でもお馴染みとなったヒーロー作品が見たいわけではないと思う。
となると最初に抑えておきたいのは、今のアメコミ映画化の流れを作った『X-MEN』シリーズだ。大ヒット作ということもあるが、アメコミ映画の歴史を語る上で外せない作品だからだ。
この先アメコミ映画にハマっていけば、マーベリックかDCコミックかという好みも必ず出てくる。そんな時、基準にし易いのが『X-MEN』シリーズだ。
他にも『X-MEN』シリーズを勧める理由はある。
現在進行形の作品でありながら、ちょうど一つのシリーズが完結して切りが良いこと。そして、この先クロスオーバーによる世界観の広がりも期待ができる。
ただ、大ヒットシリーズなのでスピンオフも含めると全8作と数が多い。どれから手を付けていいのか分からないという声も多いが、もちろん『X-MEN』シリーズも公開順に見ていくのが正しい。
詳しくはこちらで解説しているので参考に⇓
あとがき
2009年にマーベルはディズニーによって買収されたこともあり、製作本数、興行収入でDCコミックの一歩先を行っている。また同じ年、これらに対抗する形でDCエンターテインメントもワーナー・ブラザースに買収されている。
こうしたマーベルとDCコミックのライバル関係がより巨大な資本を呼び込み、アメコミ映画化の流れを加速させている。
業界が活性化するのは大いに結構なことだが、ファンを無視した映画産業の在り方には疑問が残る。特にアメコミ映画はクロスオーバーが大きな醍醐味だ。大人の事情が垣根を生み、ファンの夢を壊してしまっているのが現状だ。
過去にコミックではマーベルとDCコミックのクロスオーバーが行われている。映画も制作会社同士が協力すれば、より自由な世界観で作品を描けるようになり、それは映画文化自体の発展にも繋がるはずだ。
「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」のようにマーベルでもDCコミックでもないアメコミの映画化はシンプルでわかり易い……
とてもシンプルでわかりやすいですね。
スパイダーマン事情や過去のキックアスやスポーンを省き基本的なマーベルとDCをまとめてる
個人的には2017年公開の異色のバットマン映画「LEGOバットマンムービー」が面白そう。
>アマルガムコミックスさん
コメントありがとうございます。
今回はできるだけ分かり易く解説するため、『アベンジャーズ』と『スパイダーマン』の共演事情にまでは言及できませんでした。
それでもこんな長文になってしまったわけで。お付き合い頂いて感謝します。
これから公開される数多のアメコミ映画の中で『LEGOバットマンムービー』とはさすがです。
このシリーズはまた違った意味でおもしろいですよね。
初めまして。最近アベンジャーズ/エンドゲームを観て今更ながら
アメコミ映画にハマったもので、正に何処から手を付けて良いのか
分からず、ネットで調べても知れば知るほど、マーベルはディズニー
なの?でもスパイダーマン・ファーフロムホームはSONYだし
今度はDCコミックて何?と疑問だらけのうちにフェイズ4の発表で
来年には更に本数が増えるとかで、お恥ずかしい事に脳内がパンク寸前です(笑)
そしてちょうどこちらのサイトにお目にかかり大変光栄です。
俄かの私にも凄く分かりやすかったです!
おかげさまで順序を間違うことなく過去の作品から観賞できそうです。
ところが少し寂しい事に最近アメコミ映画に関しての記事を
更新されていないように伺えました、現在エンドゲームが興行収入ランキング
一位のアバターを抜き、アメコミ映画だけでなくディズニーも実写化が
加速し映画界がとても賑わっている様に感じますのでどうかどんな記事
でも良いので新たな更新を楽しみにしております。