完全武装の猛者たちがBMXで暴走する文明崩壊後の世界で悪に立ち向かう青年の戦いを、1980年代B級映画テイスト溢れるタッチで描いた低予算ヒーローアクション。『マッドマックス』のバイクをBMXに乗り換えたようなこの作品、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で最優秀観客賞を受賞するなど各地の映画祭で話題を集めた。先日全米公開となったばかりの出来たてホヤホヤの新作。
『スキャナーズ』で主演し『トータル・リコール』の敵役・リクターを演じた、いぶし銀のマイケル・アイアンサイドが本作でも敵役・ゼウスを演じる。さらに紅一点ロランス・ルブーフ演じる”アップル”のキュートさにもやられる。
数々の短編作品を手がける映像制作集団「ROADKILL SUPERSTAR」の中心人物であるフランソワ・シマード、アヌーク・ウィッセル、ヨアン・カール・ウィッセルの3人による初の長編映画。
- 製作:2015年,カナダ
- 日本公開:2015年10月3日
- 上映時間:95分
- 原題:『Turbo Kid』
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3 映画を見る前に知っておきたいこと
予告
あらすじ
核戦争によって文明が崩壊した1997年。水を巡って猛者たちが争う荒涼とした無法地帯で、20インチのBMXに跨るキッド(マンロー・チェンバーズ)は、スクラップ交換などでなんとか1人で生き延びていた。彼はコミック“ターボライダー”を人生のバイブルとしていた。そんなある日、謎の少女アップル(ローレンス・レボーフ)に出会ったキッドは、彼女に惹かれてゆく。しかし、水を牛耳る暴力的な覆面の男たちが巣食う地のリーダーのゼウス(マイケル・アイアンサイド)によってアップルがさらわれてしまう。
コミック“ターボライダー”から勇気を得たキッドは彼女を取り戻すため、ゼウスに正義の鉄槌を喰らわすため、ターボライダースーツに身を包み、チャリンコで荒野を疾走!敵のアジトに乗り込んでゆく!!
ターボキッドとアップルの運命は・・・
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映画を見る前に知っておきたいこと
完璧なB級映画
チャリンコ版マッドマックスなどと言われる本作。その例え方が、またいかにもB級映画らしい。でもそれとは裏腹に世界中の映画祭を猛烈な勢いで駆け抜け、高い評価を得ている。サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で最優秀観客賞を受賞している。このサウス・バイ・サウスウエスト映画祭とは、毎年3月にアメリカテキサス州オースティン市で行なわれ、当初は音楽祭であったが今では映画部門が多くの注目を集める大規模なものとなっている。2015年度は来場者数8万人、メディア数2,251人を記録している。また、2015年度は応募総数7,361作品の中から長編150作品、短編106作品が上映され、102作品がワールドプレミアとなった。メッセージ性の強いドキュメンタリー作品からハリウッド的なエンタテイメント作品まで幅広いジャンルの作品が上映されるのも特徴だ。
日本人なら北斗の拳を連想するようなくだらない設定と、『マッドマックス』のバイクをBMXに乗り換えたいかにもなパロディと、あまりに温度差のある過激な血みどろシーンは超80年代的な空気で描かれた完璧なB級映画だ。B級映画として非の打ち所がなさ過ぎる。B級なのに完璧というのもおかしな話だが・・・
観客の脳裏に焼き付いて離れないアクションや血みどろの死体の数々は、B級映画の枠を超えたエンターテイメントと言える。それがこの作品の新しさであり、多くの評価に繋がっている。
- 世界の映画祭での評価
2015年サンダンス映画祭正式出品 /2015年SXSW映画祭・最優秀観客賞受賞/2015年ファンタスポア映画祭最優秀作品・審査員美術賞受賞/2015年ブチョン国際ファンタスティック映画祭・最優秀監督賞受賞/2015年ダラス国際映画祭・2015年オランダイマジン映画祭・2015年リトルロック映画祭・2015年シアトル国際映画祭・2015年シドニー映画祭・2015年エジンバラ国際映画祭・2015年ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭・2015年ニュージーランド国際映画祭 正式出品
B級映画の定義
B級映画とは今でこそ一つのジャンルのように言われるが、その定義は曖昧なものである。もともとは1930年代のアメリカで始まった短期間の撮影、低予算で、上映時間も限定されたなかで製作された映画で、二本立て興行の中で添え物として役割が主であった。多い予算をかけてスターを揃えて一流監督が作る長編映画(フィーチャー)がA級映画で、それに比べて、添え物として少ない予算で無名の俳優を使い撮影期間も上映時間も限られている映画がB級映画という格付けとしての呼び名なのだ。二本立て興行の中で添え物を目的として制作された映画をB級映画と呼び、それはただの映画産業における歴史的な現象と言う人もいる。
もともとB級映画の定義はこんな感じだが、そこにファンが現れたことで一つのジャンルのようになってしまった。低予算、短時間で製作され、観客動員を当て込んで話題性だけを誇示するゲテモノ映画として製作されることによって、逆に似た作風のものが多く出てきてしまったのだろう。それらが持つ共通の雰囲気が一つのジャンルになってしまったのではないかと思う。
本作は、B級映画として紹介されているが、本来の定義のB級映画とは異なっている。役者もそこそこ有名であるし、映像制作集団「ROADKILL SUPERSTAR」の中心人物3人による監督や、ましてや二本立て興行の添え物でもない。それでもB級映画というのは一つのジャンルとして確立している証拠である。