愛が起こした奇跡
『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)のジャン=マルク・ヴァレ監督が野心的に放った、スピリチュアルかつ幻想的な愛の物語。
1969年のパリ、現代のモントリオール、二つの異なる時代を生きる母と息子、男と女の時を越えた絆が、愛を記憶した音楽で紡がれてゆく。
1969年のパリでダウン症の子を育てるシングルマザーをフランスの人気歌手ヴァネッサ・パラディ。現代のモントリオールに住む悩める男をカナダ出身のミュージシャン、ケヴィン・パラン。
マシュー・ハーバートの『Cafe de Flore』やピンク・フロイド、シガー・ロスらの曲が、2人の人生の愛を彩る。
Contents
予告
あらすじ
1960年代のパリと現代のモントリオール。決して交わることのない二つの時代を生きる母と息子、ひと目で惹かれあった男と女。2つの人生が時を超えてつながる……
Scene.1 1969年 フランス・パリ
美容師のジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)はダウン症の息子ローラン(マラン・ゲリエ)を女手ひとつで育てるシングルマザー。彼女は文献で「ダウン症の子は寿命が短い」という記述を読んでから、息子が少しでも長く生きられるよう必死に努力していた。普通の子と同じ学校に通わせ、普通の子と同じように習い事をさせる。それが彼女にとっての生き甲斐だった。

© 2011 Productions Cafe de Flore inc. / Monkey Pack Films
ある日、ローランのクラスに同じダウン症の女の子ヴェラが転校してくる。一目あった瞬間から、お互いに惹かれあうローランとヴェラ。片時も離れたがらない二人のことは学校で問題となった。
学校側から専用の施設に入れるよう打診されたジャクリーヌは、ローランを普通の子と同じように育てたい一心でその提案をはねつけるのだった。
Scene.2 現代 カナダ・モントリオール
DJのアントワーヌ(ケヴィン・パラン)は40代。今まさに幸福な人生を謳歌していた。音楽で成功し、体は健康そのもの。両親は健在で二人の元気な娘にも恵まれた。娘の母親とは2年前に離婚し、今は新しい恋人ローズ(エヴリーヌ・ブロシュ)と情熱的に愛し合っている。

© 2011 Productions Cafe de Flore inc. / Monkey Pack Films
一方、前妻のキャロル(エレーヌ・フローラン)はアントワーヌとの離婚から今も立ち直れずにいた。未だにアントワーヌこそが運命の相手だと信じる彼女は、アントワーヌの心変わりが信じられずにいた。夜中になると夢遊病のように徘徊しだすキャロル。娘達は母を心配し、新しい愛に浮かれているアントワーヌに反発していた。
映画を見る前に知っておきたいこと
一見、何の関係性も持たない並行する2つの物語をジャン=マルク・ヴァレがどう結び付けていくのか。
『ダラス・バイヤーズクラブ』『わたしに会うまでの1600キロ』(14)『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(15)でヴァレ監督が見せた“再生の物語”とは異質なスピリチュアルな世界からのアプローチは、野心的であまりに切ない愛の物語を紡ぎ出してゆく。
あなたはソウルメイトの存在を信じますか?
ソウルメイトとは“前世からの運命で結ばれた仲間”を意味し、今の人生で深い結び付きが強い相手は、前の人生でも、あるいは来世でも絆を持つとされている。
恋愛における運命の相手は“ツインソウル”と呼ばれ、出会ったばかりなのに特別な懐かしさを感じたり、奇妙な偶然の一致が頻繁に起こるのだという。
こうした考え方は宗教に端を発しており、死んだ人間は前世の業を背負って生まれ変わるとする“輪廻転生”の教えは、仏教が広く伝わる日本でも知られている。
実はこの分野、つまり魂を科学的に解明しようとする動きもある。その大きな一歩となったのがヒッグス粒子の発見だった。この粒子の性質は他の粒子に質量を与えるというものだ。ヒッグス粒子の発見はすなわち、質量のない粒子の存在を裏付けるものであり、それは魂や霊といった質量のない性質のものを解明するきっかけになり得るのである。
そして仏教では、“縁”そのものは素粒子が持ち、人はその素粒子の“縁”によって様々な運命を生きると考えられている。
少し話が脱線してしまったが、こうした考え方が映画の重要なプロットとなっているのだ。
しかしその一方でヴァレ監督は、輪廻そのものに強い関心を持ってこの物語を作り上げたわけではないとも語っている。抽象的な表現として輪廻を用いたに過ぎないからこそ、この映画は普遍的な愛の物語のようにも映るのだろう。
そこにジャン=マルク・ヴァレの野心と意欲が垣間見える。
作品データ
原題 | 『Cafe de Flore』 |
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製作国 | カナダ・フランス |
製作年 | 2011年 |
公開日 | 2015年3月28日 |
上映時間 | 120分 |
映倫区分 | R15+ |
キャスト
キャスト | バネッサ・パラディ |
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ケビン・パラン | |
エブリーヌ・ブロシュ | |
エレーヌ・フローラン | |
マラン・ゲリエ | |
アリス・デュボワ | |
エブリン・ドゥ・ラ・シェネリエール | |
ミシェル・デュモン |
監督・スタッフ
監督 | ジャン=マルク・ヴァレ |
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脚本 | ジャン=マルク・ヴァレ |
製作 | ピエール・エバン |
マリー=クロード・プーラン | |
製作総指揮 | ケン・ローチ |
ケン・ローチ |
映画(カフェ・ド・フロール)の冒頭に空港でDJ アントワーヌとダウン症の子どもたちが一緒に写っているシーンがあります。男の背中は次第に遠く小さくなってシュールな影絵のように次第に痩せていきます…。また、悪夢とか水中の映像、ベットシーンなど印象的なシーンの連続です。映画(ツリー・オブ・ライフ)のごとくモノローグで進む内面性や1969年代の抑えた色調、音楽の魅力!ソウルメイトという言葉がキーワードとなって時空を超えた魂の愛情の連鎖・交錯劇♪
コメントありがとうございます。
魂という漠然とした概念を映像でどう表現していくのかはとても興味がありましたので、映像についての描写はとても参考になりました。
イメージに訴えかけるような印象的な画と音楽で引き込むような作りになっているんですね~。
こういう映画こそ、ぜひ映画館で見てみたいものです。
ヴァネッサがジョニーと別れた時にショックを受けたファンは沢山いたでしょう。あの二人が別れるなんて本当の愛は存在するの?と若いフランス人の女性が言ってたけど、この映画のローズとアントワーヌがジョニーとアンバーに見えてしまい、前世で犯した罪と考えたらヴァネッサのことも理解できた。