パパは、ボクがきっと呼び戻すんだ ──
“リトル・ボーイ”、それは第二次世界大戦時にアメリカが広島に投下した原子爆弾の呼び名でもある。この映画は日本とも決して無関係ではない。
メキシコの新鋭アレハンドロ・モンテベルデ監督は、広島に投下された原子爆弾“リトル・ボーイ”から着想を得て脚本を書き上げ、人種や年齢を超えた友情から人を赦すことが平和へとつながる道筋だと伝える。
8歳の白人少年ペッパーと日系人ハシモト、小さな町のはずれ者同士の友情を通して描かれる平和へのメッセージ。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3 映画を見る前に知っておきたいこと
予告
あらすじ
第二次世界大戦下、カリフォルニア州にある小さな漁村で暮らす8歳の少年ペッパー・バズビーは、町の誰よりも背が低いことから“リトル・ボーイ”とからかわれていた。ペッパーの数少ない楽しみは、唯一の“相棒”である父親と空想に浸りながら冒険遊びをすることと、父親の好きな奇術師ベン・イーグルのマジックを一緒に見ることだった。

© 2014 Little Boy Production, LLC.
平穏なバズビー家の日常は兄の徴兵がきっかけで一変する。兄は偏平足を理由にロンドンは徴兵検査に引っかかり、代わりに父親が戦場へと駆り出されることになってしまう。ペッパーにとって父親の存在はあまりに大きかった。
ある日、奇術師ベン・イーグルのマジック・ショーでアシスタントを務めたペッパーは、ビンを動かすことに成功する。自分にもベンのような力があるのではないかと信じたペッパーは、戦場の父親に向かって念を送るのだった。
そんなペッパーの前に現れたのは、収容所から釈放された日系人ハシモト。ペッパーは日系人だと、敵意むき出しでハシモトの家の窓ガラスを割ってしまい教会で司祭に呼び出される。

© 2014 Little Boy Production, LLC.
ビンを動かしたのはペッパーの力ではなく信じる気持ちであると諭す司祭は、ペッパーがよい行いをするよう“ハシモトに親切を”と付け加えたキリスト教に古くから伝わるリストを渡した。
翌日からペッパーはリスト一つ一つを埋めようと、ハシモトに会いに行く。お互いに牽制しあっていたペッパーとハシモトだったが、会話を続けるうちに、二人の間には人種も世代も超えた友情が芽生えはじめる……
Sponsored Link映画を見る前に知っておきたいこと
メキシコ最大の映画賞ルミナス賞で作品賞、最優秀監督賞、新人賞(ジェイコブ・サルヴァーティ)の3冠に輝いた、あの『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)が引き合いに出されるほどの秀作を生み出したメキシコの新鋭アレハンドロ・モンテベルデ監督。今、世界的に見てもメキシコ人監督が熱い!
ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノの新世代
2015年と2016年のアカデミー賞を賑わせた、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)と『レヴェナント: 蘇えりし者』(15)もメキシコ人監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥだった。2年連続で監督賞受賞という快挙を成し遂げている。
また『パンズ・ラビリンス』(06)や、今年日本でも公開された『クリムゾン・ピーク』(15)の監督ギレルモ・デル・トロ。彼もダークファンタジーのヒットメーカーとして知られるメキシコ人監督だ。
そして、2013年のアカデミー賞で作品賞ほか同年度最多となる10部門にノミネートされ、計7部門(監督賞・撮影賞・視覚効果賞・作曲賞・音響編集賞・録音賞・編集賞)で受賞を果たした、間違いなくSF映画史に残る名作『ゼロ・グラビティ』(13)を手掛けたのもメキシコ人監督アルフォンソ・キュアロンだった。
90年代以降、メキシコでは“ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ(新しいメキシコ映画の意)”という映画運動が起こり、よりハイクオリティな作品が生み出されるようになる。アルフォンソ・キュアロンは“ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ”を代表する監督でもある。
2000年以降は、“ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ”はよりインディペンデント寄りとなり、個人的な表現を取り入れたヨーロッパ映画の影響を受け始めた。
『ゼロ・グラビティ』が、恐ろしくハイクオリティなSF映画でありながら、どこか淡々としたヨーロッパ映画のような雰囲気を併せ持っていたのはそういうことだ。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や『クリムゾン・ピーク』のようなヒット作にしても、メキシコ人監督が手掛けた作品はインディペンデント映画の空気を持っている。
そして今、“ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ”の流れを汲む新世代として最も注目を集めるのがミシェル・フランコ監督だ。
先日、日本でも公開された『或る終焉』(15)は、2015年カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞していることで話題となった。
ミシェル監督は、長編2作目の『父の秘密』(12)でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリに輝き、日本ではまだ未公開であるが監督・プロデューサーを務めた『Desde allá』(15)では2015年ベネチア国際映画祭で最高賞となる金獅子賞を獲得している。
“ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ”の新世代には、アルフォンソ・キュアロンも、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥも、ギレルモ・デル・トロも真っ青な新しい才能が眠っている。
『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』の監督アレハンドロ・モンテベルデもまた“ヌエーヴォ・シネ・メヒカーノ”の新世代を担う一人なのだ!
作品データ
原題 | 『Little Boy』 |
---|---|
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2014年 |
公開日 | 2016年8月27日 |
上映時間 | 106分 |
キャスト
キャスト | ジェイコブ・サルバーティ |
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エミリー・ワトソン | |
ケイリー=ヒロユキ・タガワ | |
マイケル・ラパポート | |
デビッド・ヘンリー | |
エドゥアルド・ベラステーギ | |
ベン・チャップリン | |
トム・ウィルキンソン | |
尾崎英二郎 |
監督・スタッフ
監督 | アレハンドロ・モンテベルデ |
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脚本 | アレハンドロ・モンテベルデ |
ペペ・ポーティーロ | |
製作 | アレハンドロ・モンテベルデ |
レオ・セベリーノ | |
製作総指揮 | エドゥアルド・ベラステーギ |
リカルド・デル・リオ・ガルナレス | |
マーク・バーネット | |
ローマ・ダウニー | |
エミリオ・アスカラガ・ジャンetc. |
ぜひ、観たいと思いますが、残念ながら上映する映画館が広島にはありません。
DVD か、本になっていると嬉しいのですが・・・
> 大場 恵子さん
コメントありがとうございます。
この作品はアレハンドロ・モンテベルデ監督のオリジナル脚本ですので、原作本は存在しません。
大場さんにご指摘いただいて初めて気付きましたが、広島で公開されないのですね。
せっかく、広島に関連するタイトルが付けられているのに残念です。
監督はメキシコ人ですが、映画としてはアメリカ映画なので
DVDでしたらいずれ観られるのではないでしょうか。
まだしばらく先になると思いますが、ツタヤで1本ぐらい入荷する映画ではないかと思います。
それにしても、映画は思い立った時に観たいですよね。
現在、アメリカに留学している者です。アメリカ板のNetflixで、Little Boy観ました。すごくいい映画です。第二次世界大戦の作品として私が日本で今まで観てきたものは全て日本人目線だったのですが、この映画は逆で日本人を憎むアメリカ人と差別される日本人、日本人捕虜ではなくアメリカ人捕虜など、かなり違った観点だと思います。観ながら何度も号泣しました。アメリカ人の知り合いにおすすめしようと思います。また、日本人にも是非、観てほしいです!
Asukaさん、映画の感想ありがとうございます。
アメリカでこの映画に出会ったことは、どこか運命的ですね。
日本人にも観てほしいという意見には僕も賛成なのですが、日本ではDVDも販売されておらず鑑賞が難しい状況です。
動画配信サービスなどで見かけたら、ここに情報を書きたいと思っています。
ツタヤでDVDを借りたときはさほど、期待はしていませんでしたが、物語がすすむにつれ感動の一言です
DVDを購入し、息子夫婦やに友人たちに貸しみてもらっています
主人公の男の子が孫と1歳しか違わないこともあり、かわいいと思える理由でしょう
アメリカの空軍兵士と結婚し、韓国の基地に赴任中の娘家族にも夏休みに親子で見て欲しい映画だとすすめています
9歳の孫からの感想がたのしみです