ただ、一緒にいたかった ──
その切なる願いが、世界を変えた。
罪の名は“結婚”。それは今からほんの60年前。アメリカのいくつもの州では異人種間の結婚が法律で禁じられていた。1958年のある夜、突然逮捕されたラビング夫妻。実話を基に描き出される二人のに純粋なる愛の記憶。それは親愛の妨げでしかないこの法律を変えるきっかけとなった、時代の常識を愛が貫いた瞬間だ。
この真実の物語に感銘を受け、映画化を熱望したのが『英国王のスピーチ』(10)でオスカーを手にしたコリン・ファースだった。彼が製作に加わり、『MUD マッド』(12)のジェフ・ニコルズ監督と手を取り合って、実在の夫妻の慎ましくも美しい人生を丁寧にスクリーンに焼きつける。
『ブラック・スキャンダル』(15)のジョエル・エドガートン、『プルートで朝食を』(05)のルース・ネッガ。ラビング夫妻を演じた二人は、2016年のゴールデングローブ賞で主演男優賞&主演女優賞にWノミネートされ、ネッガの演技は2016年カンヌ国際映画祭においても批評家たちから絶賛を受けている。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を観る前に知っておきたいこと
- 3.1 ジェフ・ニコルズ
予告
あらすじ
1958年のアメリカ、バージニア州。レンガ職人のリチャード・ラビング(ジョエル・エドガートン)は、恋人のミルドレッド(ルース・ネッガ)から妊娠を告げられた。大喜びで結婚を申し込むリチャードだったが、彼らが生れ育ったこの土地では異人種間の結婚は法律で禁止されていた。

© 2016 Big Beach, LLC.
子供の頃に出会って育んだ友情が愛情へと変わっていったリチャードとミルドレッドにとって、不可解な法律が目の前に立ちふさがる。二人は結婚が認められるワシントンD.C.で法律上の婚姻を結び、地元に新居を構えて新たな暮らしを始めた。

© 2016 Big Beach, LLC.
そんな矢先のある夜、突然現れた保安官によって二人は逮捕されてしまう。そこでラビング夫妻に突きつけられた残酷な選択。離婚か生まれ故郷を捨てるか、二人が選べる未来はその2つしか用意されていなかった……
Sponsored Link映画を観る前に知っておきたいこと
“アメリカ史上最も純粋なラブストーリー”と紹介されたこの実話は、すでに本国で多くの感動を誘い高い評価を得ている。ジョエル・エドガートン、とルース・ネッガ、ラビング夫妻を演じた二人の評価もさることながら、前回のアカデミー作品賞に輝いた『スポットライト 世紀のスクープ』が社会派映画だっただけに、本作の2017年アカデミー賞への期待も高まる。ましてや、万人に響く普遍的なラブストーリーなら尚更だ。
日本で公開される3月3日にはすでにアカデミー賞の受賞結果が発表されているが、それがどうあれ、この真実の物語さながらに映画に抱いた感情までは変えられない。
ジェフ・ニコルズ
若干38歳の若き監督ジェフ・ニコルズ。彼がメガホンを握った作品はまだわずか5本と、そのキャリアは浅い。
2011年に彼が手がけた『テイク・シェルター』は、あまりに実験的な試みのサイコ・スリラーだった。半ば田舎町に暮らすごく平凡な主人公の脳内で進行していくストーリは、どこまでもリアルでありながら誰一人死ぬことはない。強迫観念にかられ、せっせとシェルター作りに没頭する主人公の狂気と孤立感は、現代社会を覆う閉塞感を暗喩しているようでもあった。
この確信犯的な意欲作はカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを始め、世界で多くの映画賞を獲得した。しかしその一方で、彼はまだ日本で広く知られるようなビッグタイトルは手にしていない。
この頃は鬼才の片鱗を覗かせているようにも感じられたが、翌年にマシュー・マコノヒーを迎えた『MUD マッド』(後にニコルズ監督の代表作となる)は、『テイク・シェルター』に漂っていた閉塞感を自ら打破するようなドラマ性に満ちた作品となった。
アメリカ中南部の川縁にある田舎町で暮らす二人の少年が逃亡犯と出会い、心通わせながら成長していく姿は“現代版『スタンド・バイ・ミー』”とも紹介され、今も多くの映画ファンの中に名作として残っている。
これまでの監督作品のすべてで脚本も書いてきたジェフ・ニコルズ、多彩な作風はその自由な作家性の現れだった。
『MUD マッド』は映画批評サイトRotten Tomatoesで、今も支持率98%をキープしている。そして、『ラビング 愛という名前のふたり』を含めたすべてのニコルズ作品で支持率のアベレージは90%を超える。
この驚くべき才能が、アメリカを代表する監督になる日は近い。
作品データ
原題 | 『Loving』 |
---|---|
製作国 | イギリス・アメリカ |
製作年 | 2016年 |
公開日 | 2017年3月3日 |
上映時間 | 102分 |
キャスト
キャスト | ジョエル・エドガートン |
---|---|
ルース・ネッガ | |
マートン・ソーカス | |
ニック・クロール | |
マイケル・シャノン | |
テリー・アブニー | |
アラーノ・ミラー | |
ジョン・バース |
監督・スタッフ
監督 | ジェフ・ニコルズ |
---|---|
脚本 | ジェフ・ニコルズ |
製作 | ジェド・ドハーティ |
コリン・ファース | |
サラ・グリーン | |
マーク・タートルトーブ | |
ピーター・サラフ | |
製作総指揮 | ブライアン・カバナー=ジョーンズ |
ケン・ローチ |