映画を観る前に知っておきたいこと

キセキ あの日のソビト
実話を基に描き出すGReeeeN 青春の軌跡

投稿日:2016年12月1日 更新日:

キセキ あの日のソビト

この瞬間を全力で生きる、
すべての“ソビト”たちへ ──

メンバー全員が歯科医師と音楽活動を兼業する稀有なバンドGReeeeN。映画のタイトルに用いられた“ソビト”とは、彼らが10年以上も前に作った曲のタイトルでもある。この曲は映画のためにレコーディングされ、主題歌として物語を彩る。自由に新しいことに挑戦していく人のことを“ソビト”と呼ぶ、GReeeeNらしい爽やかな青春映画。

2008年に発売され、当時の若者たちのアンセムとなったGReeeeNの名曲「キセキ」。その誕生の裏にある軌跡が、実話を基に描き出される。

松坂桃李と菅田将暉をW主演に迎え、『そして父になる』(13)『海街diary』(15)など多くの是枝裕和監督作品の助監督を務めた兼重 淳がメガホンを取る。

予告

あらすじ

厳格な医師の父・誠一(小林薫)の猛反対を押し切り家を飛び出したミュージシャンの兄ジン(松坂桃李)。明るく優しい母・珠美(麻生祐未)に支えられ、父と同じ医学の道を志す弟ヒデ(菅田将暉)。二人の兄弟は、それぞれの道を歩むはずだった。

メタルバンド「ハイスピード」のボーカルとしてデビューが決まったジンだったが、自分のやりたい音楽とレコード会社から求められる路線のギャップ、そして仲間たちとの意識のズレを感じ、バンドはいつしか解散状態に。

一方、浪人していたヒデは自らの学力の限界を悟り、新たに歯医者という目標を見つけて勉強を続けていた。翌年、晴れて歯科大に合格したヒデもまた、仲間との出会いにより音楽の魅力に引きよせられていく。そしてヒデは、ナビ(横浜流星)、クニ(成田凌)、ソウ(杉野遥亮)を誘ってグリーンボーイズを結成し、自分たちの曲を作りはじめる。

キセキ あの日のソビト

© 2017「キセキ あの日のソビト」製作委員会

ヒデからアレンジを頼まれたジンは、グリーンボーイズのデモテープから流れるメロディーに弟たちの才能を感じていた。そして、ジンは彼らの音楽のプロデュースに専念する。

バンド時代に散々嫌味を言われたレコード会社の担当・売野(野間口徹)に頭を下げ、ジンが弟たちの夢をつなぐために必死に奔走しながら、ようやく掴みかけたデビューへの道。しかし、厳格な父がヒデの音楽活動を許すはずもない。

キセキ あの日のソビト

© 2017「キセキ あの日のソビト」製作委員会

そこでジンは、メンバーの顔を一切表に出さずに音楽のみで闘う勝負に出る……

映画を観る前に知っておきたいこと

音楽業界全体がデジタル配信に傾倒しはじめたのが、ちょうどGReeeeNがデビューした2007年頃のことだ。彼らが2008年に発表した7枚目のシングル「キセキ」は400万ダウンロードという驚異的な売上を記録している。この記録が、日本の若者たちにとって「キセキ」がアンセムだったことを物語る。その一方で、顔出しNGでデビューした彼らの素顔を渇望するファンが後を絶たなかった。

そんな中、モーションキャプチャー(現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術)を駆使した映像による本人不在のライブには、賛否両論があったのも事実だ。GReeeeNのメッセージに共感を示したファンに対して、彼らは責任を果たせたと言えるだろうか。音楽だけでの勝負を謳うなら生演奏ぐらいはファンに届けるべきだろう。

しかし皮肉にも、そんな彼らの活動スタイルがこの映画の価値を高めている。

瑞々しい演技で蘇るGReeeeNの青春

兼重監督は本作の撮影において、役者の芝居が固まり切る前に撮影を始めることを心掛けていたという。リハーサル段階で若い俳優たちが見せた自然な空気感をそのままカメラに収めようとしたのだ。

松坂桃李、菅田将暉らの瑞々しい演技は兼重監督の手腕によって引き出されてゆく。中でも、ジンの部屋のクローゼットでレコーディングを行うシーンでは、売れないバンドの下積み時代を感じさせるような生の緊張感と音楽を楽しむ等身大の若者たちの姿がある。

2008年当時、決して目にすることができなかったGReeeeNの青春がようやくファンに届けられる。

キャスト紹介

物語の柱となるジンとヒデに抜擢された松坂桃李、菅田将暉の二人は『王様とボク』(12)以来の共演となった。注目の若手が互いに抱く信頼関係は演技を通じて、そこはかとなく感じることができる。

役者として台本を何度も読み込んで役作りをする松坂桃李と、登場人物にスッと入り込んでしまうタイプの菅田将暉。ジンとヒデの生き方の違いを象徴するよう二人の対照的なアプローチが映画にうまくハマった印象を受ける。

最も感情を爆発させるジンとヒデがぶつかり合うシーンでは、松坂桃李と菅田将暉が兄弟ゆえの複雑な関係性を見事に体現してみせ、映画の大きな見どころとなった。

松坂桃李(ジン役)

2009年「侍戦隊シンケンジャー」のシンケンレッド役で俳優デビュー。映画にも活躍の場を広げると『麒麟の翼~劇場版・新参者~』(12)『ツナグ』(12)『今日、恋をはじめます』(12)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、『僕たちは世界を変えることができない。』(11)『王様とボク』(12)『マエストロ!』(15)『日本のいちばん長い日』(15)『ピース オブ ケイク』(15)『真田十勇士』(16)『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)など話題作への出演が続く。

菅田将暉(ヒデ役)

2009年「仮面ライダーW」のフィリップ役で俳優デビュー。『共喰い』(13)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『暗殺教室〜卒業編〜』『ピンクとグレー』『ディストラクション・ベイビーズ』『二重生活』『何者』『デスノート Light up the NEW world』『溺れるナイフ』など、2016年だけでも話題作に立て続けに出演している。

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